犬の皮膚型リンパ腫について
犬のリンパ腫は発生する部位によって多中心型、消化器型、皮膚型に分けられます。
皮膚型リンパ腫は、初めは皮膚炎に見えますが、慢性化し、
全身の結節や潰瘍性病変となります。
増殖する細胞の種類によってT細胞型リンパ腫とB細胞型リンパ腫に分けられ、T細胞型の予後は悪いと考えられています。
人の医学にならってT細胞型の上皮向性リンパ腫を「菌状息肉腫」と呼びます
この病気が口腔粘膜に発生した場合は長期間、局所にとどまることもありますが、いずれは全身に進行する可能性があります。
犬の皮膚型リンパ腫の診断
まず愛犬の全身状態をみるのに身体一般検査が必要です。
それには血液検査やレントゲン検査や針生検が含まれます。
その後の流れは以下のとおりです。
- まず悪性かどうかを調べるために、腫瘍の一部を病理学検査に提出します。
- 病理検査ではリンパ腫の確定と、免疫染色(T/Bの鑑別)を行います。
- 診断が出ない場合には病理検査を繰り返すか、遺伝子検査を併用します。
菌状息肉腫の臨床ステージでは次のように分類されます。
1. 前息肉腫期(紅斑症):皮膚の湿疹、紅斑、脱毛、粘膜皮膚移行部、口腔内の病変。
2. 息肉腫期(局面期):皮膚の硬く厚い隆起「プラーク(局面)」が特徴。
3. 腫瘍期:皮膚の増殖性結節が特徴で潰瘍を伴う。
4. 内臓浸潤期:内臓に浸潤して症状が現れる。
犬の皮膚型リンパ腫の治療
皮膚型リンパ腫の治療には外科手術、放射線治療、化学療法があります。
また、様々な「第4の治療」があり、どの治療を行うかは腫瘍の種類や広がりかたによって決めます。
治療オプション
- 孤立性の場合:部位によっては外科療法や放射線療法で長期管理も報告されています。
- 多発性の場合:化学療法で長期寛解がいくつか報告。化学療法はCOHP、L-CCNU、ACNU、分子標的薬などが報告されています。
- レチノイド:長期服用が必要。10ヵ月前後の寛解が得られたとの報告があります。
- その他:インターフェロン療法など
犬の皮膚型リンパ腫の予後
- 犬のリンパ腫が完治するのは全体の10%未満とされている。
- T細胞型リンパ腫の予後は悪いとされている。ただし、高分化型の場合は長期予後が期待できる。
- 菌状側肉腫は進行経過が長い場合があり、それぞれの治療反応は短期間で再発を繰り返すことが多いことが知られている。
- 口腔粘膜病変は皮膚病変に比較して、予後が良いと報告されている。
症例紹介
Dちゃんは、2歳のフレンチブルドッグ、男の子
半年前から皮膚の赤みとかゆみがあり、最近膨らんできた。
切除生検を行なったところ、リンパ腫と診断されました。
まだ若くて可愛い盛りの難病発症、飼い主さんの辛い気持ちは大変なものでした。
本来は化学療法が望ましいところですが、
飼い主様は積極的な化学療法を望まれず、内服薬のレチノイド剤で治療開始しました。
8ヶ月経ったところです、全身に広がってきました。
それでも本人はいたって元気だったのですが、
診断から11ヶ月後、内臓への転移が見つかり体調を崩してしまいました。
その後は残念な結果となりましたが、、
何もわからないまま皮膚炎の治療を続けていればここまで元気に過ごすことはできなかったでしょう。
少なくともしっかりと診断をできた事で、
飼い主様との最期の時間を納得して治療に専念できたことと思います。
また今回本ブログを執筆するに当たり、飼い主様にはお辛い中
ブログ掲載の許可を頂いた事、改めて万謝いたします。
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