犬の乳腺腫瘍とは
犬の腹部(女の子)にしこりを見つけたら、まずは乳腺腫瘍を疑います。
乳腺腫瘍が悪性(がん)である確率は約50%と言われています。
犬の乳腺腫瘍の予防法
乳腺腫瘍は女性ホルモン依存性のため、早期に避妊手術で予防が可能です。
参照:Schneider R, J Natl Cancer Inst, 1969. Brody RS, JAVMA, 1983
すでに出来てしまった腫瘍が小さくなることはありませんが、乳腺への血液供給を減らして新しい乳腺腫瘍の発生を減らす効果は期待できます。
参照:kristensen、V.M, et al, J Vet Inten Med, 2013
避妊手術の時期 | 乳癌発生リスク |
初回発情前 | 0.5% (1/200に減少) |
2回目の発情以前 | 8% (1/12に減少) |
2回目の発情以降 | 26% (1/4に減少) |
犬の乳腺腫瘍の診断
乳腺腫瘍の大きさ(Tumor)や、リンパ節転移(lymph Node)、遠隔転移(Metastasis)を評価することで,進行度を確認してから治療方針を決定します。*これをTNM分類とか、ステージングと言います。
ステージ | T | N | M |
stage1 | T1 <3cm | N0 | M0 |
stage2 | T2 3~5cm | N0 | M0 |
stage3 | T3 >5cm | N0 | M0 |
stage4 | Any | N1 | M0 |
stage5 | Any | Any | M1 |
犬の乳腺腫瘍の外科(放射線)治療
一般的には下記の三段階の手術方法があります。
1. 腫瘍切除
腫瘍だけを小さく切り取ります。良性腫瘍や検査目的で行われます。
麻酔時間は短く、痛みも少ない方法ですが、乳腺を残して切除するため再発の可能性は高くなります。
図の赤い丸●は乳腺腫瘍で、点線部分が切除範囲です(黄色い丸●はリンパ節、ピンクの丸●は乳頭)
2. 部分〜片側乳腺切除
腫瘍を含めて乳腺組織を一括切除します。大きな腫瘍でもしっかり切除が可能で取り残しを防ぎます。
切除する広さや深さを調節することよって、再発の可能性を減らすことが出来ます。
図の赤い丸●は乳腺腫瘍で、点線部分が切除範囲です(黄色い丸●はリンパ節、ピンクの丸●は乳頭)
3. 両側乳腺切除
両側の乳腺を広範囲に切除します。何度も再発を繰り返す場合や、多発する乳腺腫瘍に有効です。再発や新しい腫瘍の発生リスクは最低限に抑えられます。手術の傷が大きいため、治るまで皮膚がつっぱる感じが残ります
図の赤い丸●は乳腺腫瘍で、点線部分が切除範囲です(黄色い丸●はリンパ節、ピンクの丸●は乳頭)
犬の乳腺腫瘍の化学療法
現在、乳腺腺癌には抗がん剤「アドリアマイシン」「カルボプラチン」や、「エンドキサン」と非ステロイド系の消炎剤「COX2阻害剤」を併用する治療法が使用されています。いずれも手術後の再発・転移を予防するために補助的に使います。
近年では、新しいタイプの抗がん剤「分子標的薬」の効果も期待されています。
ちなみに犬では、悪性の乳腺腫瘍にホルモン受容体があまり発現しないため、人で使われる「ホルモン療法剤」は使用されていません。
犬の乳腺腫瘍の早期治療をするためには
先に述べたように、犬の乳腺腫瘍の悪性比率は約50%ですので、半数は良性の乳腺腫瘍です。
ご家族が「本当に切除する必要があるの?」と考えてしまうのも無理がないでしょう。
しかし,早期に摘出すれば確定診断(病理検査)もできますので、はじめに検討していただきたい治療法です。
また、治療の成否を左右する予後因子は「腫瘍の大きさ」・「リンパ節浸潤の有無」と報告されています。
つまり、放置して増大・進行すれば死亡リスクが高くなるため、早期治療が最善の方法ということです。
日々のスキンシップを欠かさず、定期的に皮膚の触診をすることが一番の予防になります。
当院では、乳腺腫瘍の早期発見のための触診法の動画を公開しています。
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