猫の舌に腫瘍?
舌下口腔内肉芽腫|TPC浜松動物総合病院|静岡県浜松市中央区の動物病院

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猫の舌に腫瘍?
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Newsねこブログ症例紹介院長のブログ

2022.06.27

猫の舌に腫瘍?
舌下口腔内肉芽腫

猫の舌下腫瘍とは

ネコの口の中にできるしこりの約80~90パーセントが悪性腫瘍だと言われています。

その中でも代表的な「扁平上皮癌」は周囲の組織に広がる速度が早く完治が困難な、がんの一つです。

   →猫の扁平上皮癌についてはコチラ

口の中にしこりができた場合は、ただの口内炎であるのか、腫瘍であるのかを早急に判別することが重要です。

多くの場合は、できるだけ早期に生検(しこりを一部切り取る検査)によって良性、悪性の確定をします。

 

猫の舌下腫瘍の症例紹介

雑種猫 メス 13歳

舌の出方がおかしく、口の中を気にするが、口を触らせてくれないとの主訴で来院しました。

院内での観察により、右舌下に腫瘍を発見。

既往歴:特になし

検査所見

体重3.2kg 体温38.0℃ 心拍数160回/分 呼吸数40回/分

一般状態   :良好

一般身体検査 :右側舌下に1cm大の腫瘤が存在し、表面が出血していました。

レントゲン検査:特記すべき異常所見なし

血液検査   :異常所見なし

細胞診    :有意な細胞得られず

 

猫の舌下腫瘍の外科治療

第1病日 「腫瘍切除術」 実施しました。

すでに舌の動きが上手くできないほど、大きくなってしまっていますので、もし悪性であれば舌を丸ごと取らなくてはなりません。

早急に確定診断が必要なため、切除生検を行いました。

舌根部をやや巻き込む形で存在する腫瘍を、底部の筋肉を含めて切除しました。

麻酔に問題はなく、覚醒も良好でした。

術後の病理診断は「炎症性の肉芽組織」でした。

 

猫の舌下腫瘍の治療経過

 その後、2ヶ月ほどして腫瘍が再発してきたため免疫抑制剤を開始しました。

 一時は内科療法により改善したのですが、消失と増大を繰り返したため、

 第200病日 「レーザーメスを使用しての小切開切除」 実施しました。

 再発巣は有茎状であり、前回の病理検査で良性腫瘍と判明していたため、最小マージンでの切除を行いました。

 

猫の舌下腫瘍の治療まとめ

 今回は猫の性格と腫瘍の存在部位から、術前には良悪判定が困難でした。

 そのため、まずは切除生検を行い、手術後に病理検査によって確定診断をしました。

 猫の口腔腫瘍は悪性比率が非常に高いのですが、本症例のような免疫反応性の肉芽腫も一定数発生します。

 本症例の組織検査では、底部に好酸球の浸潤が見られたことから、基礎に好酸球性肉芽腫の存在が疑われました。

 このような疾患は原因によって再発を繰り返すこともあり、本症例は免疫抑制剤と再切除を行うことによって良好に管理することができました。

 

 猫の口腔腫瘍は口の中を見る機会が少ないため、発見が遅れがちになる病気です。

「ドライフードを食べるのを嫌がる」「食事のときに頭を振る」「口を気にして掻く」「よだれに血が混じっている」「首を傾けたままじっとしている」などの症状がありましたら、早めに病院にご相談ください。

 

ご家族の感想

「先生の早い処置のおかげで安心して生活できていることに感謝しています。
私たちも日々、観察して異常がないか、見ています。
以前のイヌ・ネコも安心して診察していただけることに感謝です。」

 

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この記事を書いたひと

アバター

武信

浜松家畜病院院長

飼っている動物:大型犬2匹、小型犬2匹
趣味:音楽鑑賞・キャンプ
性格:まとめ上手

【メッセージ】
子供の時から動物好き、獣医師である祖父に憧れて、今に至ります。
はじめて担当した患者さんがガンで悩んでいたことから、腫瘍専門の獣医師に。
動物の病気に悩んだ時は、気軽に相談してください、一緒に考えます。

    このブログの監修

    武信行紀(たけのぶゆきのり)浜松家畜病院院長

    武信行紀(たけのぶゆきのり)

    治療方針:恩師の言葉である「慈愛理知」(慈しみと愛をもって動物と飼い主に接し、理論と最新の知識をもって診療に当たる)を胸に、人と動物の絆に貢献します。

    経歴:

    • 鳥取県鳥取市出身
    • 1999年 麻布大学獣医学科卒業
    • 2005~2009年 麻布大学腫瘍科レジデント(サブチーフを務める)
    • 2013年 獣医腫瘍科認定医1種取得
    • 2014年 日本獣医がん学会理事就任現在に至る

    所属学会・研修:

    • 日本獣医がん学会
    • 獣医麻酔外科学会
    • 獣医整形外科AOprinciplesCorse研修課程終了
    • RECOVER BLS&ALS 研修課程終了

    主な執筆・学会発表

    • 2003年~2007年 「犬の健康管理」 ANIMAL WORLD連載
    • 2005年 「拡大乳腺切除および補助的化学療法により,良好な経過が得られた猫乳腺癌の1例.」(第26回動物臨床医学会年次大会)
    • 2006年 「血管周皮腫の臨床的研究」(第27回動物臨床医学会年次大会)
    • 2008年 「外科切除および放射線治療を行った高分化型線維肉腫の2例」(第27回日本獣医がん研究会, JONCOL2008/No.5)
    • 2009年 「特集:血管周皮腫」 (InfoVets 2008/8月号)
    • 2010年 『小動物臨床腫瘍学の実際』 翻訳参加 (Withrow & MacEwen's Small Animal Clinical Oncology 4th ed.)
    • 2010年 「外科切除を行い良好な経過が得られた乳頭状扁平上皮癌の1例」(第30回獣医麻酔外科学会)
    • 2010年 「肝破裂による血腹が見られた猫の肝アミロイド―シスの一例」(第19回中部小動物臨床研究会)
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