犬の肥満細胞腫とは
体表に発症する悪性腫瘍の中で最も多い腫瘍です。
この腫瘍は悪性度に幅があり、良性に近いグレード1なら5年生存率は8割を超えるのに、高い悪性度のグレードⅢの場合わずか6%しかありません。
そのため、高悪性度(グレード3)では、できるだけ大きな範囲を外科切除し、補助療法を行う必要があります。
悪性度は手術後に病理検査によって確定診断されますが、足の機能を温存したい場合など、まず内科療法から始める選択肢もあります。
症例紹介
パピヨン 11歳 去勢雄
1ヶ月前に気づいた左肩の腫瘍を、「肥満細胞腫」と診断されました。
かかりつけ病院の先生は直ちに当院をご紹介いただき、来院されました。
肥満細胞腫の検査所見
体重6.9kg 体温38.2℃ 心拍数130回/分 呼吸数30回/分
一般状態 :良好
一般身体検査 :左肩の前方に5cmの腫瘤、軟性・境界不明瞭
疼痛を伴い、肩関節への浸潤を疑う
浅頸リンパ節 2cm腫大
画像検査:特記すべき異常所見なし
血液検査:特記すべき異常所見なし
細胞診 :異形性の少ない肥満細胞
仮診断 :皮下肥満細胞腫 ステージ2a 肩関節浸潤を疑う
肥満細胞腫の内科治療
手術、放射線、化学療法の治療法を提示しました。
ただ、肩関節に浸潤している恐れがあり、本格的に手術するとなると前肢の機能を損なう可能性があります。
とはいえ腫瘍は相当大きくなっており、痛みもあるため、飼い主様はひとまず内科療法を選択されました。
肥満細胞腫は、さまざまな腫瘍随伴症候群を伴うため、まずH1H2ブロッカーなどのお薬を投与します。
その上で下記の治療を実施しました。
第1病日 ① 分子標的薬「イマチニブ」投与開始
〜消化器症状が散発するため、2週間ほどで中止しました。
第28病日 ② ホルモン剤「プレドニン」投与開始
〜高用量から開始し、徐々に減量しました。
腫瘍の境界が不明瞭なので、治療開始前にしこりの周りと怪しい部分をマジックで印をつけておきます。
治療の結果、印の範囲より腫瘍が小さくなれば効果ありです。
②の治療によって、腫瘍は次第に縮小し、すっかりわからなくなりました。
肥満細胞腫の治療まとめ
腫瘍の悪性度は病理検査によって診断されるため、通常は手術後に確定してから化学療法や補助治療を始めます。
ただし、足の機能を温存したいなどの場合は内科療法から始める選択肢もあります。
今回は低〜中悪性度の腫瘍を想定していましたので、試験的に上記の治療を行いました。
ただし、高悪性度の肥満細胞腫は局所再発率・遠隔転移性ともに高く、早期に外科・化学療法を全て駆使する集学的治療が必要になりますので、
できるだけ始めに外科手術を行う選択が望ましいでしょう。
現在、6ヶ月ほど経過しましたが、腫瘍は消失した状態を維持できています。
痛みのストレスがなくなったせいか、病院での性格が明るくなったように感じます!
今回はホルモン剤で良好な縮小が見られましたが、肥満細胞腫は再発する可能性が高い腫瘍です。
再発をした場合は、外科手術を含めて治療方針を再検討する必要があります。
再発期間は32週間以内と言われていますので、8ヶ月は要注意です。
ご家族の感想
「しこりがある事に気づき、検査していただいた結果、ガンであることが判明し抗がん剤で治療していただいています。
しこりもかなり小さくなってまいりました。犬自身も元気もあり、治療しながら共に過ごしていきたいです。」
腫瘍の治療など、犬猫の病気の治療をどうすれば良いか分からない場合は、いつでもご相談ください。
あれ??何か腫れてない?
そういえば最近体重が減っているかも・・・・
触ると嫌がるようになった???
等々、何か異変を感じた場合は、当院までご相談下さい。
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