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患肢温存の腫瘍切除術とは(血管周皮腫)|TPC浜松動物総合病院|静岡県浜松市中央区の動物病院

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患肢温存の腫瘍切除術とは(血管周皮腫)|TPC浜松動物総合病院|静岡県浜松市中央区の動物病院

症例紹介院長のブログ

2022.04.14

足を残したい!
患肢温存の腫瘍切除術とは(血管周皮腫)

患肢温存手術とは

足に悪性腫瘍ができた時、通常は断脚手術を行いますが、さまざまな理由で足を残したい状況(高齢犬など)もあります。

そんなときは、患肢(足の形)を温存して腫瘍だけを切除します。

 

皮膚の悪性腫瘍の中でも比較的発生率が多い血管周皮腫などが適応になります。

この腫瘍のグループ(軟部組織肉腫といいます)は中高齢犬の四肢、特に肘の周囲に好発します。

悪性ですが遠隔転移率が比較的低いため、この手術を行います。

 

 

症例の紹介

ミニチュア・シュナウザー 避妊メス 10歳

トリミングで肘の皮膚腫瘍に気づいた。

既往歴:洞性徐脈性不整脈・右尿管結石で治療中

 

 

腫瘍のための検査

体重5.9kg 体温38.0℃ 心拍数80回/分 呼吸数20回/分

一般状態   :良好

一般身体検査 :右肘に3×3.5㎝の皮下腫瘤あり。底部固着あり。

レントゲン検査:特記すべき異常所見なし

血液検査   :慢性腎臓病ステージ2

細胞診    :異形性の少ない細胞集塊

ツルーカット生検:「軟部組織肉腫  グレード1疑い」

急速に増大しており、このまま腫瘍が大きくなれば切除は困難です。

オーナーは足を温存した辺縁腫瘍切除を希望されました。

 

腫瘍の外科治療

 第20病日 「患肢温存・腫瘍辺縁切除術」実施。

手術中画像をご覧になりたい場合は、クリックしていただくと大きな画像が開きます

 

 実は、この子は不整脈を持っていたので、抗不整脈薬を投与しながら手術を行いました。

 リスクの高い麻酔時間を最小限にとどめる、素早い手術手技が必要となりました。

 切除と縫合は下記の図の様に行い終了しました。

 

 麻酔に問題はなく、覚醒も良好でした。

術後の病理診断:「軟部組織肉腫(血管周皮腫を疑う)」

 病理組織グレードは1〜2、核分裂指数10HPF= 4、マージンフリーでした。

 

血管周皮腫の患肢温存手術・まとめ

 

*筆者が大学病院での統計調査・確認した内容(2007年)

 

 血管周皮腫などの軟部組織肉腫は高齢犬の四肢に発生が多いことがわかっています。

 さらに遠隔転移率はそれほど高くありません。

 

 これは何を意味するかというと、

 命に関わるというよりも、足のしこりがどんどん大きくなっていくのを見ているのは辛い。。

 そんな症状の病気ですから、足の温存手術の依頼が多くなります。

 

 腫瘍を取り残せば、すぐに再発しますし、もっとひどいことになりかねませんから、腫瘍はしっかりとって、足の機能は温存するバランスが重要な手術です。

 

 本例では、なんとか前足の機能を温存したまま腫瘍を取り除くことができました。

 ぜひ、このまま良い状態を保って長生きしてほしいです。

 

 

手術後7ヶ月、毛が生え揃ったので分かりづらいですが、傷はキレイで再発はありません。

 

ご家族のコメント

「病気を知った時はどうしようと不安でした。先生の説明など聞き、安心してお任せすることができました。
再発は心配ですが、今こうして元気でいてくれる事が何よりで、先生方には本当に感謝しております。ありがとうございました。」

 

 

 

血管周皮腫の治療など、犬猫の病気の治療をどうすれば良いか分からない場合は、いつでもご相談ください。

あれ??何か足が腫れてない?
そういえば最近体重が減っているかも・・・・
足を触ると嫌がるようになった???

等々、何か異変を感じた場合は、当院までご相談下さい!!!

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この記事を書いたひと

アバター

武信

浜松家畜病院院長

飼っている動物:大型犬2匹、小型犬2匹
趣味:音楽鑑賞・キャンプ
性格:まとめ上手

【メッセージ】
子供の時から動物好き、獣医師である祖父に憧れて、今に至ります。
はじめて担当した患者さんがガンで悩んでいたことから、腫瘍専門の獣医師に。
動物の病気に悩んだ時は、気軽に相談してください、一緒に考えます。

    このブログの監修

    武信行紀(たけのぶゆきのり)浜松家畜病院院長

    武信行紀(たけのぶゆきのり)

    治療方針:恩師の言葉である「慈愛理知」(慈しみと愛をもって動物と飼い主に接し、理論と最新の知識をもって診療に当たる)を胸に、人と動物の絆に貢献します。

    経歴:

    • 鳥取県鳥取市出身
    • 1999年 麻布大学獣医学科卒業
    • 2005~2009年 麻布大学腫瘍科レジデント(サブチーフを務める)
    • 2013年 獣医腫瘍科認定医1種取得
    • 2014年 日本獣医がん学会理事就任現在に至る

    所属学会・研修:

    • 日本獣医がん学会
    • 獣医麻酔外科学会
    • 獣医整形外科AOprinciplesCorse研修課程終了
    • RECOVER BLS&ALS 研修課程終了

    主な執筆・学会発表

    • 2003年~2007年 「犬の健康管理」 ANIMAL WORLD連載
    • 2005年 「拡大乳腺切除および補助的化学療法により,良好な経過が得られた猫乳腺癌の1例.」(第26回動物臨床医学会年次大会)
    • 2006年 「血管周皮腫の臨床的研究」(第27回動物臨床医学会年次大会)
    • 2008年 「外科切除および放射線治療を行った高分化型線維肉腫の2例」(第27回日本獣医がん研究会, JONCOL2008/No.5)
    • 2009年 「特集:血管周皮腫」 (InfoVets 2008/8月号)
    • 2010年 『小動物臨床腫瘍学の実際』 翻訳参加 (Withrow & MacEwen's Small Animal Clinical Oncology 4th ed.)
    • 2010年 「外科切除を行い良好な経過が得られた乳頭状扁平上皮癌の1例」(第30回獣医麻酔外科学会)
    • 2010年 「肝破裂による血腹が見られた猫の肝アミロイド―シスの一例」(第19回中部小動物臨床研究会)
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