猫慢性腎臓病の治療
アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)とは?|TPC浜松動物総合病院|静岡県浜松市中央区の動物病院

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猫慢性腎臓病の治療
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ねこブログ症例紹介院長のブログ

2022.04.30

猫慢性腎臓病の治療
アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)とは?

アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)とは?

 アンギオテンシンは血圧調整にかかわるホルモンです。

 ARBはこのホルモンの働きを抑えるお薬です。

 動物用の薬剤ではテルミサルタン(ネコ用に販売されている「セミントラ」など)がこれにあたります。

 

「アンギオテンシンの働き〜その1〜」

  強力に血圧を上昇させる作用があります。

  ・・・つまり、ARBはアンジオテンシン受容体を遮断して、血圧を下げます

 

「アンジオテンシンの働き〜その2〜」

  腎臓の糸球体の血管(輸出細動脈)を狭くして、糸球体の中の圧力(糸球体内圧)を上昇させます。

  その結果、蛋白尿が増加し、糸球体過剰濾過を助長します。

  ・・・つまりARBは、その作用も抑制するため、腎臓に対して保護的に働きます

 

 

ネコ慢性腎臓病の治療にARB

おさらいです。

ARBの作用は  ①血圧をさげる  ②蛋白尿を減らす

猫の慢性腎臓病の悪化要因である2点に効果があるのですから、ARBを使用することで、腎臓保護作用が期待できると考えられています。

例えば蛋白尿(UPC)については、下記の報告がされていて、蛋白尿のない猫ちゃんの方が長生きすることがわかっています。

上記のことから、猫の慢性腎臓病の進行予防のため、早期からARBを使用するのが推奨されています。

ただし、ARBそのものに腎臓病の進行を抑えて寿命延長効果があるかどうかは、まだ結論が出ていません。

現状では、長期間・大規模な比較試験の結果が出るまでは、効果には「個人差がある」と言う段階です。

ARBの副作用

  投与開始後1〜2週間で血清クレアチニン値が上昇することがあります。

  これは糸球体濾過量が減ることによる「見かけ上」の上昇ですので、あまり心配ないようですが、当院では飲み始める前と比較して30%までの上昇は許容範囲と考えています。

  過度に上昇しなければ、そのまま飲み続けることによって腎保護作用が期待されます。

 

ARBの副作用を避けるには?

 どんなに良いお薬も、脱水状態で投与すると逆効果です。しっかり水分補給を心がけましょう。

 末期の腎不全で脱水している場合は、薬を与えないようにしましょう。

 

以上、このお薬を処方されたときは、上記のことに注意してくださいね。

ネコちゃんの腎臓病の辛さを少しでも和らげるために、薬が役立ってくれると良いですね!

 

 

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この記事を書いたひと

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武信

浜松家畜病院院長

飼っている動物:大型犬2匹、小型犬2匹
趣味:音楽鑑賞・キャンプ
性格:まとめ上手

【メッセージ】
子供の時から動物好き、獣医師である祖父に憧れて、今に至ります。
はじめて担当した患者さんがガンで悩んでいたことから、腫瘍専門の獣医師に。
動物の病気に悩んだ時は、気軽に相談してください、一緒に考えます。

    このブログの監修

    武信行紀(たけのぶゆきのり)浜松家畜病院院長

    武信行紀(たけのぶゆきのり)

    治療方針:恩師の言葉である「慈愛理知」(慈しみと愛をもって動物と飼い主に接し、理論と最新の知識をもって診療に当たる)を胸に、人と動物の絆に貢献します。

    経歴:

    • 鳥取県鳥取市出身
    • 1999年 麻布大学獣医学科卒業
    • 2005~2009年 麻布大学腫瘍科レジデント(サブチーフを務める)
    • 2013年 獣医腫瘍科認定医1種取得
    • 2014年 日本獣医がん学会理事就任現在に至る

    所属学会・研修:

    • 日本獣医がん学会
    • 獣医麻酔外科学会
    • 獣医整形外科AOprinciplesCorse研修課程終了
    • RECOVER BLS&ALS 研修課程終了

    主な執筆・学会発表

    • 2003年~2007年 「犬の健康管理」 ANIMAL WORLD連載
    • 2005年 「拡大乳腺切除および補助的化学療法により,良好な経過が得られた猫乳腺癌の1例.」(第26回動物臨床医学会年次大会)
    • 2006年 「血管周皮腫の臨床的研究」(第27回動物臨床医学会年次大会)
    • 2008年 「外科切除および放射線治療を行った高分化型線維肉腫の2例」(第27回日本獣医がん研究会, JONCOL2008/No.5)
    • 2009年 「特集:血管周皮腫」 (InfoVets 2008/8月号)
    • 2010年 『小動物臨床腫瘍学の実際』 翻訳参加 (Withrow & MacEwen's Small Animal Clinical Oncology 4th ed.)
    • 2010年 「外科切除を行い良好な経過が得られた乳頭状扁平上皮癌の1例」(第30回獣医麻酔外科学会)
    • 2010年 「肝破裂による血腹が見られた猫の肝アミロイド―シスの一例」(第19回中部小動物臨床研究会)
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