メトロノミック テラピー(Metronomic Therapy)とは

リズムを刻む「メトロノーム」のように規則的に、頻回に、抗がん剤を継続していく治療です。
ただし、抗がん剤は大量には使えません。 少量ずつ、になります。
メトロノミックテラピーは、ガン患者さんの「身体に優しい治療」を配慮して考案された方法です。
通常の抗癌剤治療が使えない場合、 副作用を減らして治療継続を可能にするために使用されます。 
「ガン細胞を殺す」力は弱いかもしれませんが、「がんと引き分ける」治療と言えます。

メトロノミックテラピーの変遷

1990年代、金沢大学の高橋先生 が提唱された「がんと引き分ける」治療概念ですが、当時は全く理解されず、ご苦労されたそうです。
獣医腫瘍学では当時から麻布大学の信田卓男先生(師匠!) けむり大先生が、   これに近い理論で化学療法を実践されていました。
 

2000年代、アメリカの医師・獣医師が注目し始め、それに類する治療が発展してきました。  

その中でも、多く世界中の獣医学会で報告されているのは経口薬(シクロフォスファミドとピロキシカム)を使ったメトロノミックテラピー。

海外文献 での成績は薬の量が少ないわりに、けっこう良く見えます。
さらに近年、欧米では上記の薬剤に加えてさまざまな「分子標的薬」を追加するプロトコルが試されています。
海外獣医学でこの治療が盛んに用いられている背景には、大型犬が多いため錠剤を分割をせずに使用できたり、調剤薬局のシステムが整っている実情もあるのかな、と推測しています。

メトロノミックテラピーの効果・副作用

この治療法、なぜ効果があるのか長い間不明でしたが、現在ではその理由が解明されてきました。
従来の研究と相反するような、優れた治療効果を発揮する理由は、 殺細胞作用ではなく、血管新生阻害や免疫刺激効果(T-reg抑制)と考えられています。
また、激しい副作用を伴わない代わりに、効果もマイルドだと考えられています。
ただし、長期にわたって薬を続けることが多いので、蓄積毒性(例:骨髄抑制や出血性膀胱炎)には注意が必要です。
適応される腫瘍の種類は、通常の抗癌剤が聞きにくいとされている一部の肉腫などです。

当院でのメトロノミックテラピー

日本では小型犬が多く、薬剤分割に伴う(飼い主様への)抗がん剤暴露の問題もあって使用しづらくなっています。

当院でも、経口薬を使用したメトロノミックテラピーは特定の腫瘍のみ、中〜大型犬に使用しています。
さらに、新しく登場した「分子標的薬」が優れた効果を発揮し始めたので、使用頻度は減ってきました。

ただし、メトロノミックテラピーの概念「がんと引き分ける」は動物医療ではとくに重要です。 人よりも寿命の短い動物たちにとっては、多くの場合、「長生き」よりも副作用を出さない事が求められるからです。

実は、先述の分子標的薬(2014年に発売されたパラディアなど)も治療の目標とアプローチは同じです。

「がんと引き分ける」を提唱した先人の想いが受け継がれ、今では一つの治療法として認知されています。

 

*この文章は過去に著者が書いた文章(20年近く前!)に加筆修正したものです。
この治療は現在、獣医学では比較的市民権を得ていますが、まだ医学的に主流の治療法ではありません。
ほとんどの場合は、標準治療と言われる規定量の抗がん剤を副作用が出ないように使うことのほうが重要です。
また、誤解して欲しくないのは、抗がん剤は「効果のある範囲の低容量」で使いましょう。
極端に減らせば良いという意味ではありませんし、ヘタをすると全く意味がありませんので、ご注意ください。

 

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