肛門周囲腺癌とは?
肛門周囲の腫瘍は犬では比較的多くみられますが、猫での発症は少ないとされています。
その中でも、肛門周囲の皮脂腺が悪性腫瘍に侵されるのが『肛門周囲腺癌』です。
この腫瘍は、遠隔転移率は低いが、局所の再発率が比較的高いという性質を持っています。
猫ではこの部位に触れる機会が少ないこともあり、早期発見が難しく、進行して発見されます。
肛門周囲腺癌の症例紹介
雑種猫 メス 13歳
便秘としぶりから、かかりつけ動物病院を受診、急速に増大した肛門脇の腫瘍を発見。直ちに当院を紹介受診となりました。
肛門右脇に梅干し大の腫瘤が存在し、表面が破裂していました。
既往歴:特になし
肛門周囲腺癌の検査所見
体重3.8kg 体温38.0℃ 心拍数160回/分 呼吸数40回/分
一般状態 :良好
一般身体検査 :肛門右脇に2×2.3㎝の皮下腫瘤あり。皮膚・底部との固着あり。
レントゲン検査:特記すべき異常所見なし
血液検査 :異常所見なし
細胞診 :肝細胞様の腫瘍細胞が多数採取されました
鑑別診断 :肛門周囲腺腫・腺癌・肛門嚢腺癌
肛門周囲腺癌の外科治療
第21病日 「腫瘍切除術」を実施しました。
腫瘍辺縁切除に近い形で周囲の筋肉を含めて切除し、外肛門括約筋1/3を含めて切除しました。
この切除であれば、肛門機能の温存は可能と考えられました。
麻酔に問題はなく、覚醒も良好でした。
術後の病理診断は「肛門周囲腺癌」でした。
手術後のお尻の様子。少し傾いてますが排便は問題ありません。
肛門周囲腺癌のまとめ
肛門周囲腺癌は局所再発率が高い傾向があり、犬では75%再発するという報告もあります。
ただし、早期に完全切除できた場合は、多くの患者で2年以上再発の無い事が確認されています。
今回はネコちゃんの性格と腫瘍の存在部位から、肛門周囲腺と肛門嚢腺どちらの腫瘍か判別が困難であったため、半ば生検目的の手術でした。
(手術中の触診でもはっきりとは確認できず、病理検査によって確定できました)
本来、このように進行した肛門腫瘍では、根治的切除には広範囲の肛門切除と人工肛門設置が必要ですが、オーナーはご希望されず、自力での排泄機能を温存する「辺縁切除」を選択しました。
近年、腺癌にも腺腫と同じくアンドロジェン受容体が同定されているようで、本症例も異所性アンドロジェン分泌の影響については検討が必要です。
また、抗ホルモン治療が有効である可能性が示唆されますので、今後、新しい治療法が開発されるかもしれません。
Pisani G, Millanta F, Lorenzi D, Vannozzi I, Poli A. Androgen receptor expression in normal, hyperplastic and neoplastic hepatoid glands in the dog. Res Vet Sci. 2006;81(2):231-236. doi:10.1016/j.rvsc.2005.11.001
ご家族の感想
「この病気を紹介されて癌とわかり、どのように生活していったらいいかと思いました。
先生にお任せし、術後も食欲が出て、便もしっかり出てくれてなんとかホッとしています。」
肛門周囲腺癌の治療など、犬猫の病気の治療をどうすれば良いか分からない場合は、いつでもご相談ください。
あれ??何か腫れてない?
そういえば最近体重が減っているかも・・・・
触ると嫌がるようになった???
等々、何か異変を感じた場合は、当院までご相談下さい!!!
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