News症例紹介院長のブログ

2022.06.05

手術をしない選択肢?
肥満細胞腫の内科治療

犬の肥満細胞腫とは

体表に発症する悪性腫瘍の中で最も多い腫瘍です。

この腫瘍は悪性度に幅があり、良性に近いグレード1なら5年生存率は8割を超えるのに、高い悪性度のグレードⅢの場合わずか6%しかありません。

そのため、高悪性度(グレード3)では、できるだけ大きな範囲を外科切除し、補助療法を行う必要があります。

悪性度は手術後に病理検査によって確定診断されますが、足の機能を温存したい場合など、まず内科療法から始める選択肢もあります。

 

症例紹介

パピヨン 11歳 去勢雄

1ヶ月前に気づいた左肩の腫瘍を、「肥満細胞腫」と診断されました。

かかりつけ病院の先生は直ちに当院をご紹介いただき、来院されました。

 

肥満細胞腫の検査所見

痛みのせいか、触られることを極度に警戒しています。

 

体重6.9kg 体温38.2℃ 心拍数130回/分 呼吸数30回/分
一般状態   :良好
一般身体検査 :左肩の前方に5cmの腫瘤、軟性・境界不明瞭

        疼痛を伴い、肩関節への浸潤を疑う

        浅頸リンパ節 2cm腫大

        
画像検査:特記すべき異常所見なし
血液検査:特記すべき異常所見なし

細胞診 :異形性の少ない肥満細胞

仮診断 :皮下肥満細胞腫 ステージ2a 肩関節浸潤を疑う

 

肥満細胞腫の内科治療

  手術、放射線、化学療法の治療法を提示しました。

  ただ、肩関節に浸潤している恐れがあり、本格的に手術するとなると前肢の機能を損なう可能性があります。

  とはいえ腫瘍は相当大きくなっており、痛みもあるため、飼い主様はひとまず内科療法を選択されました。 

  肥満細胞腫は、さまざまな腫瘍随伴症候群を伴うため、まずH1H2ブロッカーなどのお薬を投与します。

  その上で下記の治療を実施しました。  

 

  第1病日 ① 分子標的薬「イマチニブ」投与開始

   〜消化器症状が散発するため、2週間ほどで中止しました。

  第28病日 ② ホルモン剤「プレドニン」投与開始

   〜高用量から開始し、徐々に減量しました。

 

  腫瘍の境界が不明瞭なので、治療開始前にしこりの周りと怪しい部分をマジックで印をつけておきます。

  治療の結果、印の範囲より腫瘍が小さくなれば効果ありです。

  ②の治療によって、腫瘍は次第に縮小し、すっかりわからなくなりました。

 

しこりが小さくなったので、マジックは消してしまいました、毛も生えています。

 

 

肥満細胞腫の治療まとめ  

腫瘍の悪性度は病理検査によって診断されるため、通常は手術後に確定してから化学療法や補助治療を始めます。

ただし、足の機能を温存したいなどの場合は内科療法から始める選択肢もあります。

 

今回は低〜中悪性度の腫瘍を想定していましたので、試験的に上記の治療を行いました。

ただし、高悪性度の肥満細胞腫は局所再発率・遠隔転移性ともに高く、早期に外科・化学療法を全て駆使する集学的治療が必要になりますので、

できるだけ始めに外科手術を行う選択が望ましいでしょう。

  →肥満細胞腫の手術例についてはこちら

 

現在、6ヶ月ほど経過しましたが、腫瘍は消失した状態を維持できています。

痛みのストレスがなくなったせいか、病院での性格が明るくなったように感じます!

 

今回はホルモン剤で良好な縮小が見られましたが、肥満細胞腫は再発する可能性が高い腫瘍です。

再発をした場合は、外科手術を含めて治療方針を再検討する必要があります。

再発期間は32週間以内と言われていますので、8ヶ月は要注意です。

 

 

 

ご家族の感想

「しこりがある事に気づき、検査していただいた結果、ガンであることが判明し抗がん剤で治療していただいています。

しこりもかなり小さくなってまいりました。犬自身も元気もあり、治療しながら共に過ごしていきたいです。」

腫瘍の治療など、犬猫の病気の治療をどうすれば良いか分からない場合は、いつでもご相談ください。

 

あれ??何か腫れてない?
そういえば最近体重が減っているかも・・・・
触ると嫌がるようになった???

等々、何か異変を感じた場合は、当院までご相談下さい。

かかりつけ病院をお探しの方、近郊であれば下記リンクをご覧いただき、
問診フォームからお問合せ、ご予約をお願いいたします。
LINE@からお気軽に相談も受け付けています。

すでに他の病院にかかられている方でも、どのように治療を進めていけば良いかのアドバイスやセカンドオピニオンなど、お役に立てるかもしれません。

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この記事を書いたひと

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武信

浜松家畜病院院長

飼っている動物:大型犬2匹、小型犬2匹
趣味:音楽鑑賞・キャンプ
性格:まとめ上手

【メッセージ】
子供の時から動物好き、獣医師である祖父に憧れて、今に至ります。
はじめて担当した患者さんがガンで悩んでいたことから、腫瘍専門の獣医師に。
動物の病気に悩んだ時は、気軽に相談してください、一緒に考えます。

    このブログの監修

    武信行紀(たけのぶゆきのり)浜松家畜病院院長

    武信行紀(たけのぶゆきのり)

    治療方針:恩師の言葉である「慈愛理知」(慈しみと愛をもって動物と飼い主に接し、理論と最新の知識をもって診療に当たる)を胸に、人と動物の絆に貢献します。

    経歴:

    • 鳥取県鳥取市出身
    • 1999年 麻布大学獣医学科卒業
    • 2005~2009年 麻布大学腫瘍科レジデント(サブチーフを務める)
    • 2013年 獣医腫瘍科認定医1種取得
    • 2014年 日本獣医がん学会理事就任現在に至る

    所属学会・研修:

    • 日本獣医がん学会
    • 獣医麻酔外科学会
    • 獣医整形外科AOprinciplesCorse研修課程終了
    • RECOVER BLS&ALS 研修課程終了

    主な執筆・学会発表

    • 2003年~2007年 「犬の健康管理」 ANIMAL WORLD連載
    • 2005年 「拡大乳腺切除および補助的化学療法により,良好な経過が得られた猫乳腺癌の1例.」(第26回動物臨床医学会年次大会)
    • 2006年 「血管周皮腫の臨床的研究」(第27回動物臨床医学会年次大会)
    • 2008年 「外科切除および放射線治療を行った高分化型線維肉腫の2例」(第27回日本獣医がん研究会, JONCOL2008/No.5)
    • 2009年 「特集:血管周皮腫」 (InfoVets 2008/8月号)
    • 2010年 『小動物臨床腫瘍学の実際』 翻訳参加 (Withrow & MacEwen's Small Animal Clinical Oncology 4th ed.)
    • 2010年 「外科切除を行い良好な経過が得られた乳頭状扁平上皮癌の1例」(第30回獣医麻酔外科学会)
    • 2010年 「肝破裂による血腹が見られた猫の肝アミロイド―シスの一例」(第19回中部小動物臨床研究会)
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