お尻に巨大なオデキ?
悪性毛包上皮腫の外科治療|TPC浜松動物総合病院|静岡県浜松市中央区の動物病院

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症例紹介院長のブログ

2022.04.25

お尻に巨大なオデキ?
悪性毛包上皮腫の外科治療

悪性毛包上皮腫とは?

『IDEXX犬猫の腫瘍分類マニュアルより転載 http://www.idexxjp.com/manual/skin03/』

 

毛包上皮腫は毛穴から発生する良性腫瘍で、犬ではよく見られます。

中年齢の犬に多く、背中にオデキのようなシコリができて気づきます。

皮下で袋状に膨らんで破裂してしまうと、ひどい炎症を起こすこともあります。

一方、悪性毛包上皮腫は犬での報告が少なく、希な疾患とされています。

良性の毛包上皮腫は切除により治癒しますが、悪性毛包上皮腫は再発や転移を起こします。

 

悪性毛包上皮腫の症例紹介

ゴールデンレトリバー 去勢オス 8歳

以前からあるお尻のしこりが爆ぜました。

かかりつけ動物病院では悪性腫瘍を疑い、直ちに当院を紹介受診となりました。

急速に増大した臀部の腫瘍、表面が自壊し出血していました。

 

悪性毛包上皮腫の検査所見

体重42kg 体温38.0℃ 心拍数100回/分 呼吸数30回/分

一般状態   :良好

一般身体検査 :尾の付け根の背側に10㎝の皮下腫瘤あり。皮膚との固着、自壊あり。

        
レントゲン検査:特記すべき異常所見なし

血液検査   :特記すべき異常所見なし

細胞診    :角化物の集塊と炎症細胞を認めた。

仮診断    :表皮嚢胞の自潰

 

悪性毛包上皮腫の外科治療

 確定診断と疼痛管理を兼ねて、オーナーは切除を希望されました。

 第7病日 「腫瘍切除術」実施。

 麻酔に問題はなく、覚醒も良好であった。

 術後病理診断は 「悪性毛包上皮腫(低悪性度)」でした。

手術中画像ですので、苦手な方はご遠慮くださ い。 画像をクリックすると大きな画像が開きます。

悪性毛包上皮腫のまとめ

通常だと、間違いなく良性の疾患だと考えてしまうこのような病気が、病理検査により悪性であることが発覚しました。

このような低悪性度の腫瘍が転移を起こすことはまれですが、しばらくの間は経過観察としました。

悪性毛包上皮腫は珍しい腫瘍ですが、再発やリンパ節転移、時には骨転移で予想外に苦労することがありますので、ご注意ください。

参考文献 「信田 卓男ら(2008)骨転移をきたした悪性毛包上皮腫の犬の1例;動物臨床医学17(4) 117-122」

ご家族の感想

「家族の一員として長生きしてもらいたい。先生に手術してもらい、感謝しています。

これからもよろしくお願いします。」

悪性毛包上皮腫の治療など、犬猫の病気の治療をどうすれば良いか分からない場合は、いつでもご相談ください。

あれ??何か腫れてない?
そういえば最近体重が減っているかも・・・・
触ると嫌がるようになった???

等々、何か異変を感じた場合は、当院までご相談下さい!!!

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この記事を書いたひと

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武信

浜松家畜病院院長

飼っている動物:大型犬2匹、小型犬2匹
趣味:音楽鑑賞・キャンプ
性格:まとめ上手

【メッセージ】
子供の時から動物好き、獣医師である祖父に憧れて、今に至ります。
はじめて担当した患者さんがガンで悩んでいたことから、腫瘍専門の獣医師に。
動物の病気に悩んだ時は、気軽に相談してください、一緒に考えます。

    このブログの監修

    武信行紀(たけのぶゆきのり)浜松家畜病院院長

    武信行紀(たけのぶゆきのり)

    治療方針:恩師の言葉である「慈愛理知」(慈しみと愛をもって動物と飼い主に接し、理論と最新の知識をもって診療に当たる)を胸に、人と動物の絆に貢献します。

    経歴:

    • 鳥取県鳥取市出身
    • 1999年 麻布大学獣医学科卒業
    • 2005~2009年 麻布大学腫瘍科レジデント(サブチーフを務める)
    • 2013年 獣医腫瘍科認定医1種取得
    • 2014年 日本獣医がん学会理事就任現在に至る

    所属学会・研修:

    • 日本獣医がん学会
    • 獣医麻酔外科学会
    • 獣医整形外科AOprinciplesCorse研修課程終了
    • RECOVER BLS&ALS 研修課程終了

    主な執筆・学会発表

    • 2003年~2007年 「犬の健康管理」 ANIMAL WORLD連載
    • 2005年 「拡大乳腺切除および補助的化学療法により,良好な経過が得られた猫乳腺癌の1例.」(第26回動物臨床医学会年次大会)
    • 2006年 「血管周皮腫の臨床的研究」(第27回動物臨床医学会年次大会)
    • 2008年 「外科切除および放射線治療を行った高分化型線維肉腫の2例」(第27回日本獣医がん研究会, JONCOL2008/No.5)
    • 2009年 「特集:血管周皮腫」 (InfoVets 2008/8月号)
    • 2010年 『小動物臨床腫瘍学の実際』 翻訳参加 (Withrow & MacEwen's Small Animal Clinical Oncology 4th ed.)
    • 2010年 「外科切除を行い良好な経過が得られた乳頭状扁平上皮癌の1例」(第30回獣医麻酔外科学会)
    • 2010年 「肝破裂による血腹が見られた猫の肝アミロイド―シスの一例」(第19回中部小動物臨床研究会)
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