News症例紹介院長のブログ

2019.10.09

若齢犬の扁平上皮癌

症例のKくんは6ヶ月令のミニチュアダックスです。

$ドッグギャラリークリニック-コタ外貌「お口の中に“しこり”があるみたい?」と来院されました。 $ドッグギャラリークリニック-コタマス $ドッグギャラリークリニック-FNB
細胞診では、異型性のある上皮系の細胞集塊が見られます。
病理検査の結果、扁平上皮癌(SCC)と診断されました。
この腫瘍は非常に進行が早く、放っておくと手遅れになりかねません。
また、レントゲン写真で骨の溶解が見られたので、しこりだけをくりぬくような手術は出来ません。
そこで次のような治療オプションを提示しました。

①下顎骨の一部をふくめた外科切除(拡大切除)
②放射線治療
③手術後の補助的化学療法

さいわい、今回は最小限の手術で治療可能な範囲でした。

オーナーさまは悩んだ結果、顎を一部切除する事にしました。 $ドッグギャラリークリニック-切除直後

手術後の写真です。 $ドッグギャラリークリニック-切除組織
摘出した腫瘍の内側面。病理検査結果では「(乳頭状)扁平上皮癌 マージンクリア」。
マージンクリアとは切除辺縁のがん細胞がない状態です。
つまり、腫瘍は全て取り除かれている可能性が高いという結果でした。

$ドッグギャラリークリニック-切除後3ヶ月

手術して3ヶ月後の写真。

本症令は転移性が比較的低いと予想され、病理検査でマージンクリアだったために 抗がん剤の治療は見送りました。
現在手術後1年6ヶ月経過して、再発もありません。
扁平上皮癌の殆どは老令動物に発生しますが、今回は非常に珍しい若令犬の「乳頭状扁平上皮癌」です。
公表された文献では数例の治療しかありませんが、以下の情報が記されています。

①若令犬に発生するため進行が速い
②早期に拡大切除を行う
③放射線治療(3例)に対する反応はよいが、顎骨の変形が発生する
④適切な治療が早期に行われれば、通常のSCCよりも根治の可能性も高い

この腫瘍の難しい点は、非常に若い子犬のアゴを切除するという、 つらい決断が出来るかどうかです。
K君のオーナー様も手術をすることにとても悩まれました。
担当獣医師としての私も、「こんなかわいいアゴを切っちゃうの?」 という顔のKくんを見ると、
うーーーんとうなりました。
しかし、オーナー様の病状に対する適切な理解と潔い決断が良好な結果を生んだといえます。

 

Kくんは今もとっても元気で、来年12歳になりました。

 

こんな症状ありませんか?

最近食欲が減ってきた。
口の中の中にしこりのようなものがある。
口臭がでてきた。
フードを食べにくそうにしている。

等々気になることがありましたら、ご相談下さい。

 

この記事を書いたひと

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武信

浜松家畜病院院長

飼っている動物:大型犬2匹、小型犬2匹
趣味:音楽鑑賞・キャンプ
性格:まとめ上手

【メッセージ】
子供の時から動物好き、獣医師である祖父に憧れて、今に至ります。
はじめて担当した患者さんがガンで悩んでいたことから、腫瘍専門の獣医師に。
動物の病気に悩んだ時は、気軽に相談してください、一緒に考えます。

    このブログの監修

    武信行紀(たけのぶゆきのり)浜松家畜病院院長

    武信行紀(たけのぶゆきのり)

    治療方針:恩師の言葉である「慈愛理知」(慈しみと愛をもって動物と飼い主に接し、理論と最新の知識をもって診療に当たる)を胸に、人と動物の絆に貢献します。

    経歴:

    • 鳥取県鳥取市出身
    • 1999年 麻布大学獣医学科卒業
    • 2005~2009年 麻布大学腫瘍科レジデント(サブチーフを務める)
    • 2013年 獣医腫瘍科認定医1種取得
    • 2014年 日本獣医がん学会理事就任現在に至る

    所属学会・研修:

    • 日本獣医がん学会
    • 獣医麻酔外科学会
    • 獣医整形外科AOprinciplesCorse研修課程終了
    • RECOVER BLS&ALS 研修課程終了

    主な執筆・学会発表

    • 2003年~2007年 「犬の健康管理」 ANIMAL WORLD連載
    • 2005年 「拡大乳腺切除および補助的化学療法により,良好な経過が得られた猫乳腺癌の1例.」(第26回動物臨床医学会年次大会)
    • 2006年 「血管周皮腫の臨床的研究」(第27回動物臨床医学会年次大会)
    • 2008年 「外科切除および放射線治療を行った高分化型線維肉腫の2例」(第27回日本獣医がん研究会, JONCOL2008/No.5)
    • 2009年 「特集:血管周皮腫」 (InfoVets 2008/8月号)
    • 2010年 『小動物臨床腫瘍学の実際』 翻訳参加 (Withrow & MacEwen's Small Animal Clinical Oncology 4th ed.)
    • 2010年 「外科切除を行い良好な経過が得られた乳頭状扁平上皮癌の1例」(第30回獣医麻酔外科学会)
    • 2010年 「肝破裂による血腹が見られた猫の肝アミロイド―シスの一例」(第19回中部小動物臨床研究会)
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