News症例紹介院長のブログ

2022.08.16

腰背部の巨大腫瘤に対して辺縁切除を実施した犬の1例

体表の巨大腫瘍(軟部組織肉腫)について

犬の体表に発生する腫瘍の中では、軟部組織肉腫はよく遭遇する悪性腫瘍です。

この腫瘍は、遠隔転移率は低いが、局所の再発率が比較的高いという性質を持っています。

緩やかに進行していき、長期間で巨大な腫瘤を形成することもあります。

体表の巨大腫瘍の症例紹介

雑種犬 去勢オス 13歳
かかりつけの動物病院で、2度の手術を行ったが再発、最近急速に増大し、表面が破裂しそうになってきたため、セカンドオピニオンを求め受診されました。

前回の手術病理は「悪性神経鞘腫瘍」(軟部組織肉腫の一つ)
既往歴:特になし

体表の巨大腫瘍の検査所見

体重16.8kg 体温38.0℃ 心拍数140回/分 呼吸数30回/分
一般状態   :良好
一般身体検査 :腰背部に30×40㎝の皮下腫瘤あり。周囲との固着あり。
レントゲン検査:特記すべき異常所見なし
血液検査   :異常所見なし

細胞診   :紡錘形の腫瘍細胞が多数採取された

仮診断   :軟部組織肉腫の再発

治療選択肢 :外科治療・放射線治療・その他は限定的効果

体表の巨大腫瘍の外科治療

上記を踏まえて、まずは腫瘍を取り除く外科手術が必要であることをお話ししたところ、

飼い主様は直ちに決断されました。

第21病日 「腫瘍切除術」を実施しました。

辺縁切除でしたが、周囲の筋肉を含めて切除し、広範囲の皮膚欠損を伴うため皮弁形成が必要でした。

手術中画像をご覧になる場合はクリックしてご覧ください。
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麻酔に問題はなく、覚醒も良好でした。

術後の病理診断は「軟部組織肉腫 グレードⅡ」でした

術後の様子

体表の巨大腫瘍のまとめ

軟部組織肉腫は組織学的グレードにより1〜3の分類があります。

数字が多いほど悪性度が上がりますから、グレード3は高悪性度ということです。

グレードが高いほど、再発率・転移率は高くなります。

軟部組織肉腫のグレード辺縁切除時の局所再発率遠隔転移率
1〜2(比較的良型)10%7〜15%
3(比較的悪性)80%40%

上の表のように、軟部組織肉腫を辺縁切除した場合、グレード1〜2の場合は辺縁切除でも10%しか再発しなかったようですが、グレード3の場合は80%が再発すると報告されています。

今回のような巨大腫瘍では根治的切除には広範囲の皮膚・筋肉切除が必要ですが、本症例では歩行機能を温存するために「辺縁切除」を選択しました。

長期的に考えると再発のリスクはありますが、13歳という高齢犬でもあり、適宜治療を行えば良好に生活できる可能性が高いと考えています。

このように外科治療では腫瘍の性質や発生部位、症例の年齢を熟慮して、手術範囲を決定するべきです。

本症例はグレード2であり悪性度は中程度でしたが、当院での治療開始までに再発を3回繰り返していましたので、今後の再発の可能性は非常に高いと思われます。

幸い、本人はとっても元気!なので、今後も緩和手術と補助療法を使って闘病していくことになるでしょう。

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この記事を書いたひと

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武信

浜松家畜病院院長

飼っている動物:大型犬2匹、小型犬2匹
趣味:音楽鑑賞・キャンプ
性格:まとめ上手

【メッセージ】
子供の時から動物好き、獣医師である祖父に憧れて、今に至ります。
はじめて担当した患者さんがガンで悩んでいたことから、腫瘍専門の獣医師に。
動物の病気に悩んだ時は、気軽に相談してください、一緒に考えます。

    このブログの監修

    武信行紀(たけのぶゆきのり)浜松家畜病院院長

    武信行紀(たけのぶゆきのり)

    治療方針:恩師の言葉である「慈愛理知」(慈しみと愛をもって動物と飼い主に接し、理論と最新の知識をもって診療に当たる)を胸に、人と動物の絆に貢献します。

    経歴:

    • 鳥取県鳥取市出身
    • 1999年 麻布大学獣医学科卒業
    • 2005~2009年 麻布大学腫瘍科レジデント(サブチーフを務める)
    • 2013年 獣医腫瘍科認定医1種取得
    • 2014年 日本獣医がん学会理事就任現在に至る

    所属学会・研修:

    • 日本獣医がん学会
    • 獣医麻酔外科学会
    • 獣医整形外科AOprinciplesCorse研修課程終了
    • RECOVER BLS&ALS 研修課程終了

    主な執筆・学会発表

    • 2003年~2007年 「犬の健康管理」 ANIMAL WORLD連載
    • 2005年 「拡大乳腺切除および補助的化学療法により,良好な経過が得られた猫乳腺癌の1例.」(第26回動物臨床医学会年次大会)
    • 2006年 「血管周皮腫の臨床的研究」(第27回動物臨床医学会年次大会)
    • 2008年 「外科切除および放射線治療を行った高分化型線維肉腫の2例」(第27回日本獣医がん研究会, JONCOL2008/No.5)
    • 2009年 「特集:血管周皮腫」 (InfoVets 2008/8月号)
    • 2010年 『小動物臨床腫瘍学の実際』 翻訳参加 (Withrow & MacEwen's Small Animal Clinical Oncology 4th ed.)
    • 2010年 「外科切除を行い良好な経過が得られた乳頭状扁平上皮癌の1例」(第30回獣医麻酔外科学会)
    • 2010年 「肝破裂による血腹が見られた猫の肝アミロイド―シスの一例」(第19回中部小動物臨床研究会)
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