体表の巨大腫瘍(軟部組織肉腫)について

犬の体表に発生する腫瘍の中では、軟部組織肉腫はよく遭遇する悪性腫瘍です。

この腫瘍は、遠隔転移率は低いが、局所の再発率が比較的高いという性質を持っています。

緩やかに進行していき、長期間で巨大な腫瘤を形成することもあります。

体表の巨大腫瘍の症例紹介

雑種犬 去勢オス 13歳
かかりつけの動物病院で、2度の手術を行ったが再発、最近急速に増大し、表面が破裂しそうになってきたため、セカンドオピニオンを求め受診されました。

前回の手術病理は「悪性神経鞘腫瘍」(軟部組織肉腫の一つ)
既往歴:特になし

体表の巨大腫瘍の検査所見

体重16.8kg 体温38.0℃ 心拍数140回/分 呼吸数30回/分
一般状態   :良好
一般身体検査 :腰背部に30×40㎝の皮下腫瘤あり。周囲との固着あり。
レントゲン検査:特記すべき異常所見なし
血液検査   :異常所見なし

細胞診   :紡錘形の腫瘍細胞が多数採取された

仮診断   :軟部組織肉腫の再発

治療選択肢 :外科治療・放射線治療・その他は限定的効果

体表の巨大腫瘍の外科治療

上記を踏まえて、まずは腫瘍を取り除く外科手術が必要であることをお話ししたところ、

飼い主様は直ちに決断されました。

第21病日 「腫瘍切除術」を実施しました。

辺縁切除でしたが、周囲の筋肉を含めて切除し、広範囲の皮膚欠損を伴うため皮弁形成が必要でした。

手術中画像をご覧になる場合はクリックしてご覧ください。
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麻酔に問題はなく、覚醒も良好でした。

術後の病理診断は「軟部組織肉腫 グレードⅡ」でした

術後の様子

体表の巨大腫瘍のまとめ

軟部組織肉腫は組織学的グレードにより1〜3の分類があります。

数字が多いほど悪性度が上がりますから、グレード3は高悪性度ということです。

グレードが高いほど、再発率・転移率は高くなります。

軟部組織肉腫のグレード辺縁切除時の局所再発率遠隔転移率
1〜2(比較的良型)10%7〜15%
3(比較的悪性)80%40%

上の表のように、軟部組織肉腫を辺縁切除した場合、グレード1〜2の場合は辺縁切除でも10%しか再発しなかったようですが、グレード3の場合は80%が再発すると報告されています。

今回のような巨大腫瘍では根治的切除には広範囲の皮膚・筋肉切除が必要ですが、本症例では歩行機能を温存するために「辺縁切除」を選択しました。

長期的に考えると再発のリスクはありますが、13歳という高齢犬でもあり、適宜治療を行えば良好に生活できる可能性が高いと考えています。

このように外科治療では腫瘍の性質や発生部位、症例の年齢を熟慮して、手術範囲を決定するべきです。

本症例はグレード2であり悪性度は中程度でしたが、当院での治療開始までに再発を3回繰り返していましたので、今後の再発の可能性は非常に高いと思われます。

幸い、本人はとっても元気!なので、今後も緩和手術と補助療法を使って闘病していくことになるでしょう。

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