News院長のブログ

2022.07.07

犬の口腔悪性黒色腫
獣医腫瘍科1種認定医が解説

犬の口腔悪性黒色腫とは

悪性黒色腫(メラノーマ)は犬の口腔の腫瘍で最も多い悪性腫瘍です

歯肉から発生することが多いですが、口の中にはどこにでも発生します

黒色腫という名前からもわかる通り、黒くメラニン色素が沈着していることが特徴ですが、メラニン欠乏性の乏色素性メラノーマもあり、色調はさまざまです

下のような特徴を持っています

強い浸潤性

  • 進行が早いので、発見した時には大きくなってリンパ節にも広がっていることもあります
  • 早期に外科手術を行うことが最も重要です(生存期間は著しく向上します)
  • 外科的切除が難しいことがあり、そのような場合は放射線治療の適応となります

遠隔転移しやすい

  • メラノーマが一筋縄でいかないのは遠隔転移性も強い腫瘍であるということです
  • 外科切除や放射線治療のみでは根治できず、転移を減らす化学療法(抗がん剤)などが必要です
  • 近年では分子標的薬や、がんワクチンなど新薬の研究が行われています

犬の口腔悪性黒色腫の診断

一般身体検査により腫瘍(Tumor)のサイズと広がり、リンパ節(lymph Node)浸潤を確認します

胸部レントゲン検査で転移(Metastasis)の有無を確認します

全身状態の把握のために血液検査、腹部超音波検査も実施した後、細胞診や組織検査を実施します

全ての検査所見から進行度分類(これをTNM分類とかステージングと言います)を行います

臨床ステージT分類:腫瘍サイズ(cm)N分類:リンパ節浸潤M分類:転移
stage1<2
stage22~4
stage3>4 or 骨浸潤+可動性あり
stage4すべて+対側または固着
WHOによる犬の口腔腫瘍ステージ分類 (ステージ判定は上記のいずれかを満たす場合)

犬の口腔悪性黒色腫の治療

1. 外科手術

術式切除範囲適用
1. 腫瘍切除腫瘍のみを切除主に検査目的
2.顎骨部分切除腫瘍を含めた顎の一部を切除上顎腫瘍や小さな腫瘍
3.顎骨片側切除腫瘍を含めた片側の顎を切除下顎の腫瘍

 腫瘍のサイズと生存期間の相関がわかっていますので、早期に手術を行うことが推奨されます

 またほとんどの場合、上記の手術に加えて腫瘍が浸潤した下顎リンパ節を摘出します

2. 放射線治療

種類1回の照射照射回数・期間の例適用麻酔回数や費用
1. 緩和的治療(低分割照射法)大線量(6〜8Gy)週1回、4〜8回放射線効果の高い腫瘍、高齢の動物少ない
2. 根治的治療(高分割高線量照射法)小線量(2〜4Gy)週3〜5回、10回以上最大限の治療効果、固形がんの治療多い

 放射線治療の方法は大きく分けて2種類ありますが、口腔悪性黒色腫の治療では1. の低分割照射が効果的です

 放射線治療を行った場合も、大きさと生存期間の相関がわかっています。1997年の報告では、2cm以下 vs 2cm以上で生存期間中央値は19ヶ月 vs 7ヶ月でした

3. 化学療法

  白金化合物「カルボプラチン」の効果(反応率は約30%)などが報告されています

  手術や放射線治療の補助として使用し、遠隔転移を抑制します(3〜4週間に1回、点滴注射)

  非ステロイド系の消炎剤「COX-2阻害剤」などの併用効果も報告されています

  治験中の「がんワクチン」は期待されていますが実施できる施設が限定され、適応症例も限られています

  現在、新しい分子標的療法が複数研究中です。まだ効果の検証はされていません

犬の口腔悪性黒色腫の症例紹介

シェットランドシープドッグ 12歳 去勢オス

歯磨き中に気づいた口腔粘膜のしこりで来院されました

診断は悪性黒色腫ステージ1

数回の腫瘍切除と化学療法で3年間経過しました。現在も転移はなく、生活に支障はありません

雑種犬 11歳 オス

急速増大した下顎の腫瘍が出血してきたとのことで来院されました

診断は悪性黒色腫ステージ4

すでに転移をしていたため、止血処置と痛み止め処置を行いました

上記からもわかるように、初期に治療する方が効果が高い腫瘍です。ぜひご自宅でのお口チェックをお願いします

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武信

浜松家畜病院院長

飼っている動物:大型犬2匹、小型犬2匹
趣味:音楽鑑賞・キャンプ
性格:まとめ上手

【メッセージ】
子供の時から動物好き、獣医師である祖父に憧れて、今に至ります。
はじめて担当した患者さんがガンで悩んでいたことから、腫瘍専門の獣医師に。
動物の病気に悩んだ時は、気軽に相談してください、一緒に考えます。

このブログの監修

武信行紀(たけのぶゆきのり)浜松家畜病院院長

武信行紀(たけのぶゆきのり)

治療方針:恩師の言葉である「慈愛理知」(慈しみと愛をもって動物と飼い主に接し、理論と最新の知識をもって診療に当たる)を胸に、人と動物の絆に貢献します。

経歴:

  • 鳥取県鳥取市出身
  • 1999年 麻布大学獣医学科卒業
  • 2005~2009年 麻布大学腫瘍科レジデント(サブチーフを務める)
  • 2013年 獣医腫瘍科認定医1種取得
  • 2014年 日本獣医がん学会理事就任現在に至る

所属学会・研修:

  • 日本獣医がん学会
  • 獣医麻酔外科学会
  • 獣医整形外科AOprinciplesCorse研修課程終了
  • RECOVER BLS&ALS 研修課程終了

主な執筆・学会発表

  • 2003年~2007年 「犬の健康管理」 ANIMAL WORLD連載
  • 2005年 「拡大乳腺切除および補助的化学療法により,良好な経過が得られた猫乳腺癌の1例.」(第26回動物臨床医学会年次大会)
  • 2006年 「血管周皮腫の臨床的研究」(第27回動物臨床医学会年次大会)
  • 2008年 「外科切除および放射線治療を行った高分化型線維肉腫の2例」(第27回日本獣医がん研究会, JONCOL2008/No.5)
  • 2009年 「特集:血管周皮腫」 (InfoVets 2008/8月号)
  • 2010年 『小動物臨床腫瘍学の実際』 翻訳参加 (Withrow & MacEwen's Small Animal Clinical Oncology 4th ed.)
  • 2010年 「外科切除を行い良好な経過が得られた乳頭状扁平上皮癌の1例」(第30回獣医麻酔外科学会)
  • 2010年 「肝破裂による血腹が見られた猫の肝アミロイド―シスの一例」(第19回中部小動物臨床研究会)
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