〜〜門脈シャントの外科手術〜〜
病気の情報については「門脈シャントとは」をご覧ください。
当院で実施した手術例をご紹介します。(*手術画像がありますのでご注意ください。)
患者様はチワワの女の子、5ヶ月で体重1.2kgしかありません。
この様な発育不全も門脈シャントの子に多い症状です。
各種血液検査の数値とアンモニア、胆汁酸の上昇から門脈シャントを疑い、ご来院されました。
手術1週間前から、結紮後痙攣症候群の予防のため、レベチラセタムを投与しています。
〜〜結紮後痙攣症候群とは〜〜
門脈シャントの閉鎖後、およそ3日以内に起きる原因不明の症候群。 肝臓血管の急激な再開に伴う代謝物の影響や低血糖症との関連が疑われている。 発症するとけいれんが止まらず、麻酔薬などで発作を止めざるをえないが、かなり予後が悪い。 手術前に、抗けいれん薬「レベチラセタム」を投与すると予防効果があることが報告されています。
〜〜門脈造影〜〜
麻酔下で、腸の静脈(大変細い血管です!)にカテーテルを設置して、造影剤を注入しながら、CアームX線撮影装置で血管を観察します。
上の画像は、血管造影モードのCアーム画像。向かって右側の影がシャント血管です。
〜〜シャント血管の結紮〜〜
門脈造影の結果を参考にして、シャント血管を探索します。
門脈圧を測定しながら、シャント血管を仮結紮します。
今回は、結紮前の門脈圧が6mmHg、仮結紮直後は15mmHgまで上昇しました。
門脈高血圧症になってはいけないため上記のような観察を行い、腸管の血流に異常が起きなければ、本当の結紮に移行します。
〜〜結紮後再造影〜〜
シャント血管結紮後の造影写真、向かって右側のシャント血流が消えているのがわかります。
〜〜術後管理〜〜
術後はけいれんの発症に注意しながら、点滴入院で3日間観察します。
さらに合併症を起こさずに術後2週間を過ごすことが出来たら、正常な生活に戻ります。
この手術の後は、約80%が正常な生活を送り、寿命を全うすると考えられています。