犬の骨肉腫とは
骨の腫瘍にも良性と悪性とがあります。
良性の場合は体の別の部位へ腫瘍が広がることはなく、生命の危険度はほぼありません。
これに対し悪性の場合は転移を起こして広がっていくため、生命に危険が及びます。
多くの骨腫瘍は悪性で、強い痛みを伴うとされています。
そのような場合は早急に手術をするかどうか決める必要があり、手術によって不快感を軽減し、良い生活の質「Quality Of Life」をもたらすチャンスもでてきます。
悪性腫瘍の代表は骨肉腫です。
大型犬で最も多く発生し、発生年齢は1~2歳と7~8歳にピークがあります。
その4分の3が四肢に発生し、「肘から遠く、膝から近い」場所によく発生します。
骨肉腫を患ったイヌのおよそ90%が、すでに肺転移を起こしています。
過去のデータを元に治療法ごとの生存期間を比べると、手術のみ3~4ヶ月、手術と抗がん剤の併用治療1~2年となっています。
手術だけでなく、抗癌剤の併用療法で3〜6倍の治療効果が期待できる事になります。
症例紹介
9歳の秋田犬、半年前から前足の腫れと痛みを訴えていたそうです。
足の腫れはどんどん進行して、正常な足の倍以上に腫れ上がって、とても痛そうです。
検査の結果、骨を溶かしながら悪性腫瘍が増殖していることがわかりました。
骨が溶けて、皮膚が破れていく痛みを取るため、断脚手術をご提案しました。
飼い主さんは苦渋の決断を迫られましたが、痛みに耐える愛犬の辛さを考えて手術を決断されました。
腫瘍は肘まで及んでいたため、手術は肩を含む体幹部断脚となりました。
足先だけの切除なら義足の設置もできるのですが、今回はしっかり取り切る事を優先しました。
無理に肘から先を残しても、擦れて炎症や出血を起こすリスクが高まります。
年齢を考えると義足に慣れさせるための長期間の練習も負担になると思われました。
肩と脇の下にあった異常に腫大したリンパ節も同時に切除できました。
全ての手術が終わって、病理検査を待つ2週間のあいだに、痛みから解放された秋田犬くん、みるみる元気に回復を見せました。
他の足の負担を避けるために、歩行に補助が必要なはずですが、そんな事おかまいなしに飛び跳ねるようになったのです。
飼い主さんの苦渋の決断が功を奏し、我々の努力も報われた瞬間でした。
病理検査はやはり、骨肉腫でした。
異常に腫れていたリンパ節も転移ではなく感染によるものだったことがわかりました。
今回の腫瘍は比較的おとなしいタイプだったこともあり、抗癌剤を使わずに経過を見ていくことになりました。
骨肉腫の治療など、犬猫の病気の治療をどうすれば良いか分からない場合は、いつでもご相談ください。
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