犬の前立腺癌について

前立腺がんは10歳前後の雄犬に多く発生します。
未去勢犬に見られる前立腺肥大と似ていますが、まったく違う病気です。                  

前立腺肥大は去勢手術で改善します。
前立腺癌は、浸潤性が強く、転移性が高いガンで、肺・リンパ節・骨への転移が知られています。
移行上皮癌・扁平上皮癌などの悪性腫瘍が発生する事もあります。
腫瘍の治療には外科手術、放射線治療、化学療法などがあり、どの治療を行うかは腫瘍の種類や広がりかたによって決めます。

犬の前立腺癌の症状

前立腺の腫大により・・・血尿・排尿障害・排便の障害(しぶり・血便)
排尿障害が続く事により・・・細菌性膀胱炎・腎炎・腎不全
骨への転移により・・・腰から下の激しい痛み

犬の前立腺癌の診断

上記の症状が見られたら、まず愛犬の全身状態をみるのに身体一般検査が必要です。
それには血液検査やレントゲン検査や超音波検査が含まれます。
その後の流れは以下のとおりです。

  1. まず尿道の開通性を確かめるために尿カテーテル検査を行い、尿と前立腺液を採取します。
  2. 炎症と腫瘍を鑑別するため、採取した尿と前立腺液で細菌検査と細胞診、遺伝子(BRAF)検査を行います。
  3. 前立腺の損傷を調べるために尿道造影レントゲン検査を行います。
  4. 腫瘍の種類を調べるために、病理学検査を行います。

犬の前立腺癌の治療

前立腺癌の治療では、状態に合わせて外科手術・放射線・化学療法を選択します。

  • 前立腺癌の手術は、しこりの部分だけを切り取るのではなく、健康な組織も含めて尿道と前立腺をすべて切除します。症状を抑える効果は高いと考えられています。
    癌が大きい場合や、周囲への浸潤が強い場合は完全にとりきることが難しく、再発と合併症が多いために術前にじっくり検討が必要です。

  • 放射線治療の効果は緩和的とされています。骨転移の痛みを抑える効果もあります。

  • 化学療法はCOX-2阻害薬や白金製剤を中心に治療が行われています。
    緩和と転移抑制が目的の治療です。

 

 いずれにしても、犬の前立腺癌は治療の難しい病気であり、早期に除外診断を行い対策を練る必要があります。

 

症例紹介

10歳のワイヤーヘアード・ダックスの男の子。
持病の腰痛と慢性の膀胱炎に悩んでいましたが、膀胱結石ができてしまいました。
膀胱結石の治療と前立腺の精査を行ったところ、前立腺の癌である事がわかったのです。

前立腺がんは進行が早く、排尿・排便の痛みと血尿がどんどん悪化していきました。
飼い主さんは、つらい症状を緩らげてあげるために、前立腺と尿道摘出を決断されました。

手術によって前立腺を取り除くことはできましたが、癌は一部直腸にまで浸潤しているようでした。

 

 

手術中画像ですので、苦手な方はご遠慮ください。 画像をクリックすると大きな画像が開きます。

 

 

 

手術後病理検査結果は「移行上皮癌」でした。悪性のがんです。

術後の回復は順調で、食欲元気もすぐに回復してきたようでした。
手術後の生活はオムツが必要になりましたが、血尿や排尿痛から解放されました。

残念ながら、直腸への浸潤が骨転移を起こし、半年後虹の橋を渡ってしましました。
手術後の経過が良かっただけにつらいことでしたが、前立腺癌の治療成績は診断技術と手術方法の進歩によって少しずつ改善することができると考えています。

(お辛いのに、この記事を書くことを容認してくださった、飼い主様・・・ありがとうございました。)

 

→その他の前立腺癌の治療

前立腺癌の治療など、犬猫の病気の治療をどうすれば良いか分からない場合は、いつでもご相談ください。
かかりつけ病院をお探しの方、近郊であれば下記リンクをご覧いただき、問診フォームからお問合せ、ご予約をお願いいたします。すでに他の病院にかかられている方でも、どのように治療を進めていけば良いかのアドバイスやセカンドオピニオンなど、お役に立てるかもしれません。

 

 

専門診療の日程

皮膚科 9月10日(締め切りました。重症の方のみ受け付けます)
眼科診療 9月26日
循環器 11月5日

 

 

 

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