犬の膀胱移行上皮癌とは
膀胱腫瘍には良性と悪性(癌)があり、悪性腫瘍である確率は約97%であるといわれています。
中でも移行上皮癌は浸潤性、転移性が非常に強いとされていて、雄より雌に多く(2倍)、ビーグル、シェルティ、スコティッシュテリア等に好発します。
目に見えない場所にできる腫瘍なので、血尿・頻尿・しぶりなど、排尿の異常から病気の発見につながります。
犬の膀胱移行上皮癌の診断
- まず超音波検査・造影レントゲン検査などで腫瘍の存在範囲と他の泌尿器を調べます。
- 悪性かどうかを調べるために、尿や腫瘍の一部を細胞検査・遺伝子検査に提出します。
- 癌が強く疑われる場合は外科手術を行い、病理検査をします。(発生部位により手術不適もあり)
- 術後レントゲン検査などで、転移(肺転移など)がないか確認することが必要です。
- 手術する範囲が大きいほど排尿障害が残ります。およそ1~2か月ごとに定期検査が必要です。
犬の膀胱移行上皮癌の治療
腫瘍の手術は、しこりの部分だけを切り取るのではなく、まわりの健康な組織も含めて切除します。
しかし、最も発生の多い膀胱三角部といわれる部分には、尿管の開口部があるため大きな手術ができません。
(膀胱全てを切除することはできますが、合併症が多く、その後は一生、尿失禁が続くようになってしまいます。)
このような場合は残りのガン細胞をやっつけるために化学療法(抗がん剤)を最低6ヶ月を目安に行います。
外科手術での平均生存日数は約6ヶ月とされており、遠隔転移を抑えるには、外科手術のみでは十分な治療とはなりません。
犬の膀胱移行上皮癌の症例紹介
シェットランドシープドッグ 11歳 去勢オス
1ヶ月前から血尿が続くため、かかりつけ病院からのご紹介で来院されました。
既往歴:特になし
犬の膀胱移行上皮癌の検査所見
体重11.58kg 体温38.0℃ 心拍数122回/分 呼吸数30回/分
一般状態 :良好
一般身体検査 :特記すべき異常所見なし
画像検査 :膀胱内に腫瘍、筋層浸潤なし
血液検査 :異常所見なし
細胞診:異型性に乏しい上皮細胞集塊
BRAF遺伝子検査:BRAF変異あり(膀胱・前立腺癌の可能性)
犬の膀胱移行上皮癌の治療オプション
1. 外科治療 手術単独での成績は、中央生存期間100〜200日とされています。
・腫瘍摘出術:初期の膀胱癌や生検のために実施します。合併症は少なく、腫瘍のタイプによっては有効です。
・前立腺膀胱全摘出術:中期以降の膀胱–前立腺癌に適用します。合併症率は高いが、成功すれば症状緩和と長期生存の可能性があります。
➡︎当院での膀胱前立腺癌の外科手術についてはコチラも参考にしてください。
2.放射線治療 膀胱移行上皮癌への実施は限られます。膀胱線維症や腸管障害を引き起こす可能性があるため、慎重に実施が必要です。
3.化学療法 膀胱移行上皮癌には外科手術単独よりも良好とされ、中央生存期間は180〜290日と報告されています。
4.分子標的療法 新しい治療法がいくつか開発されています。およそ半数の症例で腫瘍縮小効果が認められ、250日以上の生存が認められています。
本症例は、腫瘍が小さく、細胞診での異型性が少ないことを踏まえて、まずは生活に支障のない範囲で手術して検査することにしました。
犬の膀胱移行上皮癌の外科治療
第32病日 生検を兼ねて「膀胱部分切除術」を実施しました。
水平方向に2cmのマージンをとって切除しました。
手術後の排尿障害は最小限でした。
病理検査結果「膀胱移行上皮癌 マージンクリア」 WHO分類 T 1N0M0
第93病日 術後2ヶ月で微小再発を確認
オーナーは拡大切除を希望せず、化学療法による緩和療法を実施しました。
犬の膀胱移行上皮癌の化学療法
第120病日 CBDCA 150~300mg/m2 3〜4週毎を行いました。
その後、膀胱粘膜沿いに浸潤拡大してきましたが、
現在、術後9ヶ月を経過して元気に過ごしています。
膀胱腫瘍の治療など、犬猫の病気の治療をどうすれば良いか分からない場合は、いつでもご相談ください。
あれ??血尿してる?
そういえば最近体重が減っているかも・・・・
触ると嫌がるようになった???
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