犬の甲状腺がんとは
甲状腺腫瘍には良性(腺腫)と悪性(癌)があり、犬では約90%が悪性です。
中高齢の中型犬(ビーグル、シェルティー、Gレトリバー)は甲状腺癌になりやすいとされています。
癌細胞は身体の他の部分(特に、肺やリンパ節、または気管・食道・血管)に浸潤・転移します。
犬の甲状腺癌の症状
首に腫れやしこりが見られ、腫瘍が気管を圧縮している場合、犬が咳や呼吸困難などの症状を示します。
腫瘍が食道を押していると、犬は飲み込むのが難しくなります。
咽頭の神経が腫瘍によって影響されている場合は、犬の吠え声のトーンが変化します。
犬の甲状腺癌の診断
まず身体一般検査、血液検査や画像検査を行い、その後の流れは以下です。
1. 腫瘍の浸潤を確かめる触診、超音波、レントゲン検査を行い、針生検を行います。
2. 可能であれば手術を行い、摘出組織の病理検査により確定診断をします。
3. 手術ができない場合は放射線・化学療法を選択します。
犬の甲状腺癌の治療
・甲状腺癌には可能であれば外科切除が第一選択です。腫瘍が転移しておらず、完全に切除できる場合は、数年間は生存する可能性があります。
・大きい癌や周囲へ浸潤している場合は手術が難しく、合併症も多いため、手術に代わる方法として放射線治療が報告(1年生存率80%)されています。
・化学療法は手術や放射線治療と併用することで転移を防ぎ、余命を伸ばす(約1.5~3倍)ことが知られています。
*麻布大学病院で治療した33例(2002)の中央生存期間は330日(無治療では110日)でした。
犬の甲状腺癌の症例紹介
ジャックラッセルテリア 去勢オス 10歳11ヶ月
元気がない、高いところに登れないとのことでご来院されました。
念の為、超音波検査を行ったところ、頚部にしこりが見つかりました。
既往歴:交通事故
犬の甲状腺癌の検査所見
体重7.18kg 体温38.6℃ 心拍数120回/分 呼吸数30回/分
一般状態 :良好
一般身体検査 :頚部左側に3×2cmの腫瘤
画像検査 :頚部左側に低エコー腫瘤、転移所見なし
血液検査 :著変なし
細胞診 :異形の少ない細胞集塊
オーナーは診断と治療をかねた腫瘍切除を希望されました。
犬の甲状腺癌の外科治療
第 19 病日 「甲状腺腫瘍摘出術」実施。
頚部気管の左側に3cm大の腫瘍が認められました。
肉眼上では多臓器に浸潤は無く、一括切除を行いました。
麻酔に問題はなく、覚醒も良好でした。
術後の病理診断:「甲状腺のC細胞癌 マージンクリア」
犬の甲状腺癌のまとめ
甲状腺腫瘍は治療しなければ半数以上が1年以内に死亡すると考えられています。
手術により完全切除できれば、中央生存期間は数年以上です。
発症年齢が平均10歳以上であることを考えると、治療する価値は十分あるといえるでしょう。
本症例は外科手術と化学療法を行なって2年以上経過しましたが、元気に過ごしてくれています。
今後も要注意で経過観察をしていきましょう。
ご家族のコメント
「手術・抗がん剤治療と心配ではありましたが、先生方のおかげで今とても元気に過ごしています。
これからも無理なく楽しくできるだけ長く一緒に過ごしていきたいです。」
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