症例紹介

2015.02.25

門脈シャントの外科手術

〜〜門脈シャントの外科手術〜〜

病気の情報については「門脈シャントとは」をご覧ください。

当院で実施した手術例をご紹介します。(*手術画像がありますのでご注意ください。)

患者様はチワワの女の子、5ヶ月で体重1.2kgしかありません。

この様な発育不全も門脈シャントの子に多い症状です。

各種血液検査の数値とアンモニア、胆汁酸の上昇から門脈シャントを疑い、ご来院されました。

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手術1週間前から、結紮後痙攣症候群の予防のため、レベチラセタムを投与しています。

 

〜〜結紮後痙攣症候群とは〜〜

 

門脈シャントの閉鎖後、およそ3日以内に起きる原因不明の症候群。 肝臓血管の急激な再開に伴う代謝物の影響や低血糖症との関連が疑われている。 発症するとけいれんが止まらず、麻酔薬などで発作を止めざるをえないが、かなり予後が悪い。 手術前に、抗けいれん薬「レベチラセタム」を投与すると予防効果があることが報告されています。

 

〜〜門脈造影〜〜

 

麻酔下で、腸の静脈(大変細い血管です!)にカテーテルを設置して、造影剤を注入しながら、CアームX線撮影装置で血管を観察します。

Cアーム撮影装置でリアルタイム画像を観察

向かって右側にシャント血管

 

上の画像は、血管造影モードのCアーム画像。向かって右側の影がシャント血管です。

 

 

〜〜シャント血管の結紮〜〜

門脈造影の結果を参考にして、シャント血管を探索します。

門脈圧を測定しながら、シャント血管を仮結紮します。

腸管の静脈を確保して門脈圧を測定

今回は、結紮前の門脈圧が6mmHg、仮結紮直後は15mmHgまで上昇しました。

門脈高血圧症になってはいけないため上記のような観察を行い、腸管の血流に異常が起きなければ、本当の結紮に移行します。

 

〜〜結紮後再造影〜〜

 

 

向かって右上にあったシャント血管が消失

 

シャント血管結紮後の造影写真、向かって右側のシャント血流が消えているのがわかります。

〜〜術後管理〜〜

術後はけいれんの発症に注意しながら、点滴入院で3日間観察します。

さらに合併症を起こさずに術後2週間を過ごすことが出来たら、正常な生活に戻ります。

この手術の後は、約80%が正常な生活を送り、寿命を全うすると考えられています。

 

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浜松家畜病院

静岡県浜松市の動物病院です。診療対象動物は、犬、猫、ウサギ、ハムスター、フェレットなど。総合診察、予防接種 からがん・アレルギーなどの専門医療、食事や健康管理相談、しつけ相談まで幅広く対応しています。

このブログの監修

武信行紀(たけのぶゆきのり)浜松家畜病院院長

武信行紀(たけのぶゆきのり)

治療方針:恩師の言葉である「慈愛理知」(慈しみと愛をもって動物と飼い主に接し、理論と最新の知識をもって診療に当たる)を胸に、人と動物の絆に貢献します。

経歴:

  • 鳥取県鳥取市出身
  • 1999年 麻布大学獣医学科卒業
  • 2005~2009年 麻布大学腫瘍科レジデント(サブチーフを務める)
  • 2013年 獣医腫瘍科認定医1種取得
  • 2014年 日本獣医がん学会理事就任現在に至る

所属学会・研修:

  • 日本獣医がん学会
  • 獣医麻酔外科学会
  • 獣医整形外科AOprinciplesCorse研修課程終了
  • RECOVER BLS&ALS 研修課程終了

主な執筆・学会発表

  • 2003年~2007年 「犬の健康管理」 ANIMAL WORLD連載
  • 2005年 「拡大乳腺切除および補助的化学療法により,良好な経過が得られた猫乳腺癌の1例.」(第26回動物臨床医学会年次大会)
  • 2006年 「血管周皮腫の臨床的研究」(第27回動物臨床医学会年次大会)
  • 2008年 「外科切除および放射線治療を行った高分化型線維肉腫の2例」(第27回日本獣医がん研究会, JONCOL2008/No.5)
  • 2009年 「特集:血管周皮腫」 (InfoVets 2008/8月号)
  • 2010年 『小動物臨床腫瘍学の実際』 翻訳参加 (Withrow & MacEwen's Small Animal Clinical Oncology 4th ed.)
  • 2010年 「外科切除を行い良好な経過が得られた乳頭状扁平上皮癌の1例」(第30回獣医麻酔外科学会)
  • 2010年 「肝破裂による血腹が見られた猫の肝アミロイド―シスの一例」(第19回中部小動物臨床研究会)
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