News症例紹介院長のブログ

2022.06.30

犬に多い「まぶた」の腫瘍
マイボーム腺腫の治療

マイボーム腺腫とは?

眼瞼(まぶた)の縁にはマイボーム腺があり、目を保護する油性の涙を分泌しています。このマイボーム腺から発生する良性腫瘍が「①マイボーム腺腫」です。犬では比較的よくみとめられる眼瞼の良性の腫瘍ですが、大きくなると角膜や結膜を傷つけたり、流涙の原因となります。治療は外科的切除を行います。また眼瞼にはマイボーム腺腫以外の悪性腫瘍が発生することもあるため、切除した腫瘤の病理組織学的検査も行います。

その他、まぶたの出来物としてよくある見られる病名には他にも、下記があります。

「②麦粒腫」はいわゆる「ものもらい」で、マイボーム腺に細菌が感染して炎症を起こしたものです。

「③霰粒腫」はマイボーム腺が詰まって炎症を起こしたもので、切開し貯留物を出すこともあります。

病名原因症状治療法
①マイボーム腺腫
良性腫瘍目の縁の腫瘤
大きくなると角膜損傷
外科切除
②麦粒腫
(ものもらい)
細菌感染まぶたの腫れ、
痛みや違和感、膿が出る
内科治療
③霰粒腫
油分の貯留まぶたの腫れ、痛み
急激に悪化することも
温罨法や切開
まぶたの出来物一覧:横スライドで全体を見ることができます

犬の眼瞼腫瘍の症例紹介

シーズー 8歳 オス

以前からある右眼の上まぶたのしこりが出血してきた、と来院されました。

犬の眼瞼腫瘍の検査所見 

体重9.9kg 体温38.2℃ 心拍数120回/分 呼吸数30回/分
一般状態   :良好
一般身体検査 :病変部以外、異常なし

眼科検査:右上眼瞼縁の正中に自潰した腫瘤、角膜潰瘍(フルオレセイン染色)
血液検査   :異常なし

細胞診:好中球と組織球(有意な細胞なし)    

腫瘍による刺激のためできた角膜表面の傷(緑色に染色)

犬の眼瞼腫瘍の外科治療

眼瞼腫瘍の外科切除術を行いました

縫合糸が角膜に刺激を与えないように、工夫して縫合します

手術後の病理検査は良性の「マイボーム腺腫」でした

手術後の様子

ご家族の感想

一時は目を取らなくてはならないかと思いましたが、よくなって良かったです。

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この記事を書いたひと

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浜松家畜病院

静岡県浜松市の動物病院です。診療対象動物は、犬、猫、ウサギ、ハムスター、フェレットなど。総合診察、予防接種 からがん・アレルギーなどの専門医療、食事や健康管理相談、しつけ相談まで幅広く対応しています。

このブログの監修

武信行紀(たけのぶゆきのり)浜松家畜病院院長

武信行紀(たけのぶゆきのり)

治療方針:恩師の言葉である「慈愛理知」(慈しみと愛をもって動物と飼い主に接し、理論と最新の知識をもって診療に当たる)を胸に、人と動物の絆に貢献します。

経歴:

  • 鳥取県鳥取市出身
  • 1999年 麻布大学獣医学科卒業
  • 2005~2009年 麻布大学腫瘍科レジデント(サブチーフを務める)
  • 2013年 獣医腫瘍科認定医1種取得
  • 2014年 日本獣医がん学会理事就任現在に至る

所属学会・研修:

  • 日本獣医がん学会
  • 獣医麻酔外科学会
  • 獣医整形外科AOprinciplesCorse研修課程終了
  • RECOVER BLS&ALS 研修課程終了

主な執筆・学会発表

  • 2003年~2007年 「犬の健康管理」 ANIMAL WORLD連載
  • 2005年 「拡大乳腺切除および補助的化学療法により,良好な経過が得られた猫乳腺癌の1例.」(第26回動物臨床医学会年次大会)
  • 2006年 「血管周皮腫の臨床的研究」(第27回動物臨床医学会年次大会)
  • 2008年 「外科切除および放射線治療を行った高分化型線維肉腫の2例」(第27回日本獣医がん研究会, JONCOL2008/No.5)
  • 2009年 「特集:血管周皮腫」 (InfoVets 2008/8月号)
  • 2010年 『小動物臨床腫瘍学の実際』 翻訳参加 (Withrow & MacEwen's Small Animal Clinical Oncology 4th ed.)
  • 2010年 「外科切除を行い良好な経過が得られた乳頭状扁平上皮癌の1例」(第30回獣医麻酔外科学会)
  • 2010年 「肝破裂による血腹が見られた猫の肝アミロイド―シスの一例」(第19回中部小動物臨床研究会)
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