News症例紹介

2018.10.12

尿失禁するようになった…なぜ?

久しぶりの更新です。

獣医師の竹田です。

今年も残すところあと2ヶ月ですね。気づけば浜松に来て3年半が経ち、いろいろな飼い主さんとも親しくして貰い、すっかり第2の故郷です。

関係ないですが、去年くらいから海釣りにはまってます。夏から秋はブリの子供(アブコ、イナダ)を釣りにあちこち行ってます(ほとんど坊主ですが…)。

海はいいですね。たまに悩ましい症例が来て、考え込んでしまう日には、頭の中をリセットして、結論を出しやすくしてくれます。

 

さて、先日、悩ましい症例が来たので、ちょっと紹介しましょうか。

症例は、小型犬、10歳、避妊メス

主訴は、最近、尿失禁するようになった、元気と食欲はある

 

尿失禁をする子、たまに居ます。

避妊手術後、雌性ホルモン不足で尿道括約筋機能が低下して起こる尿失禁や、水の飲み過ぎで起こる尿失禁。ほとんどは後者ですが。

避妊手術後の尿失禁は、通常、術後3ー4年で発症、大型犬で早期に手術をした場合にリスクが上がるようです(避妊手術にもデメリットはありますが、子宮蓄膿症や乳腺癌予防のためおすすめしてます)。だから大型犬の避妊手術のタイミングは、小型犬に比べ、遅めに行いますよね。

 

この症例は、どうやら多飲(飲水量:>100mL/kg/day)が原因のようです。

日々の生活で飲水量の変化って結構大事です。意外と病気のサインだったりします。

 

多飲多尿がよく見られる糖尿病や腎臓病、副腎皮質機能亢進症などの可能性がないか、視診(毛や皮膚の状態など)、血液検査、エコー検査、尿検査で診断を進めます。

この症例は、低張尿(尿が薄い)が見られましたが、血液検査やエコー検査でわかる病気ではありませんでした。除外診断です。

 

考えられる病気の一つに尿崩症があります。

抗利尿ホルモンという尿量を調節するホルモンが下垂体(脳の一部)で分泌されてますが、このホルモンが不足したり、腎臓でこのホルモンの感受性が低下すると尿量が増え、飲水量も増えてしまいます。いわゆる中枢性尿崩症と腎性尿崩症です。

腎臓はすでに問題ないことがわかってますので、中枢性尿崩症が疑われます。

抗利尿ホルモンを点眼で投薬し、尿が濃縮されるかを見ました。ちなみに、抗利尿ホルモンが過剰になると、尿量が減り、体内の水分量が過剰になり、血中ナトリウム濃度が低くなり、水中毒、神経症状を発症する危険があるので、血中電解質(特にナトリウム濃度)は注意深くモニターします。

 

身体って複雑ですよね…。

 

この症例はこの試験で、尿の濃縮が確認でき、結果的に尿失禁は抗利尿ホルモン投与後3日ほどで抑えることができました。

残る疑問は下垂体に病変があるかどうかです。症例数が少なく、報告も少ないですが、とある報告によると中枢性尿崩症と診断された犬の約3割に下垂体腫瘤が見つかったそうです。この情報を元に、原因を探りたいとのご意向でMRIを撮ることになりました。

 

 

結果的には何もなく、今は尿失禁から解放され、元気に過ごしています。

 

また一つ、難解なブログを書いてしまいました。次は釣果報告でも書きましょうかね。

以上です。

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浜松家畜病院

静岡県浜松市の動物病院です。診療対象動物は、犬、猫、ウサギ、ハムスター、フェレットなど。総合診察、予防接種 からがん・アレルギーなどの専門医療、食事や健康管理相談、しつけ相談まで幅広く対応しています。

監修

武信行紀(たけのぶゆきのり)浜松家畜病院院長

武信行紀(たけのぶゆきのり)

治療方針:恩師の言葉である「慈愛理知」(慈しみと愛をもって動物と飼い主に接し、理論と最新の知識をもって診療に当たる)を胸に、人と動物の絆に貢献します。

経歴:

  • 鳥取県鳥取市出身
  • 1999年 麻布大学獣医学科卒業
  • 2005~2009年 麻布大学腫瘍科レジデント(サブチーフを務める)
  • 2013年 獣医腫瘍科認定医1種取得
  • 2014年 日本獣医がん学会理事就任現在に至る

所属学会・研修:

  • 日本獣医がん学会
  • 獣医麻酔外科学会
  • 獣医整形外科AOprinciplesCorse研修課程終了
  • RECOVER BLS&ALS 研修課程終了

主な執筆・学会発表

  • 2003年~2007年 「犬の健康管理」 ANIMAL WORLD連載
  • 2005年 「拡大乳腺切除および補助的化学療法により,良好な経過が得られた猫乳腺癌の1例.」(第26回動物臨床医学会年次大会)
  • 2006年 「血管周皮腫の臨床的研究」(第27回動物臨床医学会年次大会)
  • 2008年 「外科切除および放射線治療を行った高分化型線維肉腫の2例」(第27回日本獣医がん研究会, JONCOL2008/No.5)
  • 2009年 「特集:血管周皮腫」 (InfoVets 2008/8月号)
  • 2010年 『小動物臨床腫瘍学の実際』 翻訳参加 (Withrow & MacEwen's Small Animal Clinical Oncology 4th ed.)
  • 2010年 「外科切除を行い良好な経過が得られた乳頭状扁平上皮癌の1例」(第30回獣医麻酔外科学会)
  • 2010年 「肝破裂による血腹が見られた猫の肝アミロイド―シスの一例」(第19回中部小動物臨床研究会)
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