こんにちは。獣医師の竹田です。
今回は、東京の大学で循環器を専門とされている先生にご協力を頂いて、
若齢犬の肺動脈狭窄症のバルーンカテーテル治療を行いましたので紹介したいと思います。  

一部、手術写真を掲載してますので、ご注意下さい。    

肺動脈狭窄症とは?
犬の先天性心疾患の中で2番目に多く、小型犬に多いのが特徴です。
ほとんどの症例は無症状から軽度の症状であるため、
心エコー検査で肺動脈血流速度と圧較差を測定し、しっかり重症度を評価する必要があります。 (
最大血流速度:3.5m/sおよび圧較差:およそ40-50mmHg以下を軽度、
最大血流速度:5m/sおよび圧較差:およそ100mmHg以上を重度)
また、肺動脈狭窄のタイプは弁上部、弁性、弁下部(漏斗部)に分類されます。

 

 

治療は、重症度により、体外循環下での拡大路形成術、
バルーンカテーテル術
内科治療(β遮断薬など)を行います。   スクリーンショット 2016-08-30 14.05.41

では、症例を紹介します。

プロフィール:ポメラニアン、1歳2ヶ月齢、オス、体重:2.6kg、BCS:2、
収縮期性心雑音を聴取 P1470026  
術前心エコー:右心拡大、心室中隔の扁平化、肺動脈弁の異常と狭窄像、
肺動脈弁後部のモザイク血流、肺動脈血流速度:4.55m/s、圧較差:82.9mmHgが認められた IM-0001-0001 IM-0001-0005   IM-0001-0012 IM-0001-0010 IM-0001-0009IM-0001-0014  

 

診断:肺動脈狭窄症の中等度-重度

 

 

治療:肺動脈狭窄部位をバルーンカテーテルにより拡張する P1470027P1470048スクリーンショット 2016-08-26 15.15.59 頸静脈を糸で牽引しながら、

切開、そこからガイドワイヤー、カテーテル、バルーンをCアーム透視下で、
頸静脈→右心房→右心室→肺動脈弁へと進めていき、
狭窄部位でバルーンを拡張させます。
その後、カテーテルを抜き、頸静脈の切開部位を縫合し、治療が終わります。

 

難易度は高い手術ですが、侵襲性は低く、無事に終わることができました。  

 

術後心エコー:肺動脈血流速度:1.46m/s、圧較差:8.5mmHg(術前の肺動脈血流速度:4.55m/s、
圧較差:82.9mmHg)
血流速度や圧較差は正常化し、治療が成功したことを確認できました。

IM-0001-0001 IM-0001-0004 IM-0001-0007

 

術後も良好に経過し、無事退院しました。

今後は、定期的に心エコー検査を行い、経過を評価する必要はありますが、
健康に過ごせることでしょう。  

 

当院は、循環器専門医と協力して循環器症例のより専門的な診断、治療ができる体制を整えています。

何か気になることがあれば、いつでもご相談下さい。