インスリノーマについて

  膵臓のβ細胞が腫瘍化する病気で、ネコでは大変珍しい疾患です。 膵臓のベータ細胞はインスリンを分泌する働きを持っていて、この病気にかかるとインスリンが無差別に、大量に分泌されます。 インスリンが血糖値を下げてしまうので、「低血糖症」が発症してしまいます。  

インスリノーマの症状

血糖値が下がって、元気がなくなり、進行するとけいれん発作や虚脱(ぐったり)状態が現れます。 ウィップルの三兆候と言われる下記の症状が診断の決め手になります。 ・空腹時低血糖に伴う神経症状発作 ・発作時の低血糖 40mg/dl以下 ・ブドウ糖投与や給餌による症状改善

インスリノーマのステージ分類(犬)

1:膵臓内の腫瘤のみ 2:局所リンパ節転移 3:遠隔転移(通常は肝臓) *犬ではステージ1〜2では1年以上の予後が予測され、外科治療を行なった方が生存期間が長いことがわかっています。 猫では大変稀な病気であるため、詳しいことは良くわかっていません。  

インスリノーマの治療

治療には内科治療と外科治療があります。 内科療法は高価で、長期間の効果が見込めないので、可能であれば膵臓腫瘍の外科摘出が推奨されています。 インスリノーマは大変小型で肉眼的に判別が難しいことがあり、その場合は膵臓の半分を切除します。    

症例紹介:ネコのインスリノーマ

 

  12歳のネコ 初診日:最近後ろ足がふらつく、けいれん発作が起きたとのことで来院されました。
空腹時血糖は40mg/dlで、低血糖時のインスリン濃度が高値でした。
血糖値がこんなに低いのに、さらにインスリンが出ているのは異常な事です。
超音波検査で明らかな腫瘤は認められなかったものの、上記の症状から開腹手術に踏み切りました。

手術では膵臓の左側に小さな腫瘤が認められたため、膵臓の左半分を切除しました。
病理検査は比較的良性なインスリノーマと診断されました。
手術後は血糖値も徐々に安定し、回復に時間はかかりましたがすっかり良くなりました。

なんと3年間にわたって、まったく無治療でも元気でいることができたのです。  

ところが3年後、突然に症状が再発しました。
今回も腫瘍は術前検査で確認できませんでしたが、再発を疑って再手術を行いました。
手術中も肉眼では腫瘍の確認ができず、前回手術した近くの膵臓の一部を切除しました。  
でも病理検査では確定診断に至りませんでした。

つまり、どこかに転移している可能性もあるということです。
2回目の手術後は少し改善し、発作は見られなくなりましたので、
オクトレオチドなどを使用した内科療法で自宅治療を行ないました。

今のところ、徐々に注射を減らしていく事もできて元気に過ごしています。
 隠れた転移がいつ発症するかわかりませんが、定期検査しながら経過を見ていく事にしています。  

 インスリノーマの治療など、犬猫の病気の治療をどうすれば良いか分からない場合は、いつでもご相談ください。

 

 

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