犬のリンパ腫とは
リンパ腫は犬では代表的な悪性腫瘍です
リンパ節、消化器などの発生部位によって治療法が異なりますので、どこに出来るかによって「解剖学的分類」がされています(下表)
どのタイプも抗がん剤を使った治療を行いますが、多中心型が最も発生が多く、治療反応も比較的良好です。
犬のリンパ腫・解剖学的分類 | 頻度 |
多中心型(体中のリンパ節が腫れるタイプ) | 80% |
前縦隔型(胸のリンパ節に塊ができるタイプ) | 5% |
消化器型(腸に病変ができるタイプ) | 5~7% |
皮膚型(皮膚病ができるタイプ) | まれ |
その他(節外型:眼、中枢神経など) | まれ |
犬のリンパ腫のステージ(進行度)
犬のリンパ腫の進行度はステージで表されます。
ステージが高いほど生存期間が短いことがわかっています。
ステージ1 | 1個のリンパ節または単一のリンパ系組織に限られる病変 |
ステージ2 | 複数のリンパ節の限局性病変 |
ステージ3 | 全身のリンパ節の病変 |
ステージ4 | 肝臓・脾臓に浸潤している病変 |
ステージ5 | 血液・骨髄に腫瘍が浸潤している |
*臨床的サブステージ | サブステージa(臨床症状なし)」または「b(臨床症状あり)」に分類 臨床症状とは元気消失、食欲不振、嘔吐、下痢などのさまざまな症状のこと |
犬の体表リンパ節
それでは、犬のリンパ節が腫れているかどうかはどのように知れば良いでしょう?
まずは体表リンパ節について覚えておきましょう。
体の外から触れる主なリンパ節は五つで、下顎、浅頸、膝下リンパ節は比較的わかりやすい部位です(正常であれば腋窩、鼠径リンパ節はよくわからないかもしれません)。この他、体の中にも無数のリンパ節があります。
- 下顎リンパ節(下顎骨のカーブするあたり)
- 浅頚リンパ節(人間で言う鎖骨のあるあたり)
- 腋窩リンパ節(前足の付け根、脇の下のあたり)
- 鼡径リンパ節(後足の付け根、内股のあたり)
- 膝窩リンパ節(膝の裏側)
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犬のリンパ腫の診断
動物病院では一般検査を行った後、下記の検査を行います
細胞診 | 細い針を刺して、異常リンパ球の増殖を確認することで速やかに診断が可能です。 |
組織検査 | 必要であれば、麻酔をかけて1箇所のリンパ節を切除して病理組織検査に提出します。 |
遺伝子検査 | 遺伝子検査(PCR法)を用いて、B細胞型であるかT細胞型であるかを調べます。 |
犬のリンパ腫の治療
主な治療法は化学療法、いわゆる抗がん剤治療です。
多くの患者様で、化学療法は効果的ですが、すぐに耐性を獲得するため数種類の薬を組み合わせて使用します。
1クールの治療を数カ月かけて行いますので、ご家族のご理解と長期間の治療に備える体力が必要となります。
使用する薬剤(商品名) | 薬の特徴 |
プレドニゾロン(プレドニンなど) | 免疫を抑えたり炎症を和らげる薬です。通常は治療の初期に用いられ、徐々に休薬していきます。 |
L-アスパラギナーゼ(ロイナーゼ) | 通常は治療の初期や再発時、リンパ腫で弱った体力を回復させる時期に用いられます。 |
ビンクリスチン(オンコビン) | リンパ腫治療では最も代表的な注射の抗がん剤です。副作用は少なめですが、皮膚毒性があります。 |
サイクロフォスファミド(エンドキサン) | リンパ腫では良く処方される抗がん剤です。血尿に注意して使用します。 |
ドキソルビシン(アドリアシン) | 比較的強い抗がん剤です。副作用として嘔吐や下痢、白血球減少、皮膚毒性があります。数時間かけて点滴します。 |
犬のリンパ腫の予後因子
進行度などによりますが、最初の治療の反応が良ければ、1年以上の生存も見込めます。その他に、長生きできる要因(予後因子)として以下があげられています。
- 臨床症状 : 始めの診断で元気消失や嘔吐、下痢といった臨床症状がない場合。
- 進行度 : 初期(ステージ1~2)の症例は長期生存できる可能性が高くなります。
- 細胞タイプ :リンパ腫にはB細胞型とT細胞型があり、同じ悪性度ならB細胞型のほうが長生きする可能性があります。
治療しなければどうなる?
初期で見つかったリンパ腫は自覚症状がほとんどありませんが、ほとんどの場合は急速に進行して全身の臓器に障害を起こして死亡します。早めに診断を確定し、治療を開始することが重要です。
過去の報告では、治療しない場合の生存期間は10~99日とされています。化学療法が効けば1年以上生きる子も珍しくありません。これは大変な違いです。なぜなら寿命から考えると、動物にとっての1年は人の5年間に匹敵するからです。
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