悪性黒色腫とは

 悪性黒色腫はメラニン細胞が腫瘍化したがんの一種です。悪性黒色腫は口の中や皮膚あるいは眼球など、いろいろな場所に発生します。悪性とあるように周りの組織を壊しながら大きくなり、別の臓器や器官に転移する可能性がある腫瘍です。また,その名前に反して腫瘍の見た目は黒くないこともあり,診断するためには細胞診や組織診断が必要です。

 眼球内にできてしまった悪性黒色腫は進行すると目の痛みが生じるだけでなく、失明してしまう恐れもあります。また、長い年月をかけてリンパ節や肺,肝臓に転移することがあるため、見つけた時点で眼球の外科的摘出とその後の定期的な検査が必要です。

 

ネコの眼球悪性黒色腫の紹介

 

症例

猫,雑種,1210か月,避妊雌,

 

既往歴

結膜炎,外傷性脱毛

 

臨床経過

2021年1月中旬 流涙とくしゃみを主訴に来院。この時、右眼の虹彩が茶色に変わってきた

12月中旬 34か月前から下腹部から左後肢にかけての舐め壊しを主訴に再来院

     右眼を精査すると,虹彩の黒色腫が疑われた

 

ネコの眼球内黒色腫の検査所見

体重 3.7kg 

一般状態   :良好
一般身体検査 :右眼球の虹彩黒色化および膨隆,下腹部~左後肢の脱毛,
画像検査   :転移所見なし
血液検査   :好中球 軽度上昇

 

ネコの眼球内悪性黒色腫の治療

60病日 右眼球の摘出手術

105病日  術後検診 

 

病理診断

右眼球:悪性黒色腫

 

ネコの眼球内悪性黒色腫まとめ

ネコの虹彩黒色腫は猫で最も一般的な悪性の原発性眼内腫瘍であり、転移率は19%~63%と報告されています。眼の色が黒く変わることは虹彩メラノーシスとよばれ、健康な子の場合でも起こることがあります。今回の症例の場合、最初に目の色が変わってきたのに気づいたのが悪性黒色腫と疑われる11か月前です。この時点では虹彩メラノーシスと呼ばれる状態で、腫瘍化していたかどうかはわかりません。一方で、眼球内の悪性黒色腫は虹彩の色が変わるだけでなく、虹彩がいびつに膨らんできます。注意深く検査しないと早期に発見することは難しいかもしれません。また、診断も治療も眼球の外科的摘出になるため、見た目の問題から今回の子のように早い段階で眼球を摘出することは勇気のいる判断だと思います。しかし、早期に発見し手術をすることでその後の生活の質や寿命に大きく影響ます。目の色が変化してきたと思ったら早めに受診しましょう。

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