こんにちは。獣医師の竹田です。

先週の土日に大阪で開催された日本獣医がん学会に院長の武信と出席してきました。

大変勉強になることばかりで、腫瘍は治せないと諦める時代は終わるのだと感じました。

さて、今回のテーマは泌尿器の腫瘍!

報告されている泌尿器の腫瘍について下記にまとめました。

 

「膀胱・尿道の腫瘍」

〔特徴〕

膀胱・尿道腫瘍の多くは侵襲性の移行上皮癌(TCC)である

特に膀胱三角部に多く発生し、尿道(56%)や前立腺(29%)へ浸潤する

好発犬種はスコティッシュテリア、シェルティ、ビーグルなど

性差はメスに発生が多い

猫での発生は稀である

転移率67%(肺50%、局所リンパ節29%、骨11%)

死因は、尿路閉塞に伴う腎不全が最も多い → 局所のコントロールが重要

〔診断〕

臨床徴候は血尿、排尿困難、排便困難など、より少数で骨転移、肥大性骨症による跛行がみられる

尿検査、エコー検査、尿路造影X線検査、血液検査を行い、腫瘍病変を確認する

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カテーテル吸引法や膀胱鏡検査、膀胱切開術によって細胞診、病理組織診断を行う

経皮的生検は、腫瘍の播種の危険があり、通常禁忌

細胞診:上皮系細胞集塊、悪性所見(N/C比の増大、核異型高度、多核、クロマチンパターンの異常、複数の核小体、核分裂像など)

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〔治療と予後〕

外科療法:限局した腫瘍の部分切除(MST:109日)、尿道を含む膀胱全摘出など

化学療法:COX阻害薬 ±ミトキサントロン(MST:291日vs195日)

対症療法:腎瘻や尿道、尿管ステントなどによる排尿障害の改善(MST:89日)              ※MST:生存期間中央値

 

と、少し専門的な話になりましたが…。

 

今回の学会では新たに、外科的アプローチの困難な腫瘍に対する動脈塞栓術、対症療法(尿管や尿道に対する緩和的ステントもしくはバイパス術)、化学療法(腫瘍の栄養動脈に対する超選択的動脈内投与)について最新の戦略を取り上げていました。

現段階では、報告が少ない、費用が高額である、熟練した手技を要するなどを理由に全てを臨床現場に生かすことは難しいですが、いつの日かより簡易化され、戦略の一つとして提供できる時代が来ると感じます。

 

当院では、ペットの高齢化に伴い、増加した腫瘍症例に専門性を持って対応しております。

腫瘍は、早期発見が重要です。もうすぐ春の健康診断が始まるので、ぜひこの機会を利用して病気の早期発見に努めましょう!

皮膚にできものができたなど、身近で気になることがあれば、いつでもご相談下さい。