猫の形質細胞性肢端皮膚炎とは
猫の形質細胞性肢端皮膚炎(pillow foot)は、足の肉球が腫れる病気です。
はじめは痛みやかゆみはありませんが、進行すると痛みが生じることがあります。
原因はよくわかっていませんが、免疫が関係しているのではと考えられています。
ネコ免疫不全ウイルス (FIV) 感染との関連がいくつかの研究で報告されているため、このウイルスについて調べることも重要です。(形質細胞性肢端皮膚炎のネコの約50%がFIV陽性です。)
はじめに悪性腫瘍との鑑別診断は必要ですが、この疾患であるとわかれば、治療により改善します。
形質細胞性肢端皮膚炎の症例紹介
日本猫 避妊メス 1歳
半年前から肉球の腫れに気づいた。最近になって痛みが出てきた。
との主訴で、かかりつけ動物病院からの紹介で来院されました。
形質細胞性肢端皮膚炎の検査所見
体重4.78kg 心拍数120回/分 呼吸数30回/分
一般状態 :良好
一般身体検査 :肉球の腫脹(複数の足に発生)
画像検査 :異常所見なし
血液検査 :FIV陰性・FeLV陰性・グロブリン5.7(高値)
仮診断 :形質細胞性肢端皮膚炎
形質細胞性肢端皮膚炎の治療
きちんと診断するためには生検が必要であることをお話しし、飼い主様と相談した結果、
生検を行うまでの間、内服薬による治療の反応を観察することにしました。
初診時の足裏の写真(右後の指、右前の肉球、左前の肉球)
投薬2週間後の写真
投薬4週間後の写真
写真では伝わりづらいのですが、腫れが引いて肉球が柔らかく萎みました。
痛みもすっかり無くなりました。
形質細胞性肢端皮膚炎のまとめ
初期治療は免疫調整作用のある抗生物質を使用することが多く、論文上は80%の症例で改善するそうです。
その他の治療にはステロイド、免疫抑制剤などがあり、最後の選択肢は外科切除です。
どの薬剤も漸減して落ち着いていれば終了し、再発を繰り返す場合は継続投与をします。
*上記の情報の多くは当院顧問(皮膚科)の大隅尊史先生に教えていただきました。
(日頃より情報提供をいただきありがとうございます、この場をかりて感謝致します。)
飼い主様の感想
「肉球の激しい腫脹があり、破裂寸前のように見られ、痛みもありましたが、
的確な診療ですぐに治療開始され、症状改善したので、とても嬉しいです。
錠剤の服用方法を実演して見せていただいため、自宅での服用がきちんとできました。」
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セカンドオピニオンなど、お役に立てるかもしれません。