News症例紹介

2019.08.01

自壊した腫瘍とモーズ軟膏

今回は、自壊した体表部の腫瘍の
緩和的な治療
として、モーズ軟膏
紹介したいと思います。

 

参考文献:「体表の自壊した腫瘤に対するMohs ペーストの有用性」  

 

一般的に、体表部にできた腫瘍の第一選択となる治療は、外科切除です。
しかし、外科切除によるメリット(即座に腫瘍組織を最大限摘出できるなど)、
デメリット(麻酔が必要、侵襲性がある、一時的なQOLの低下など)を考えると、
中にはデメリットが上回ってしまう症例もいます。

そういう場合に良いとされる緩和的な治療方法が、モーズ軟膏です。  

 

モーズ軟膏は、1930年代にアメリカの外科医モーズが考案し、
皮膚がんなどを化学的に固定して腫瘍からの出血、感染、悪臭や疼痛などを抑制し、
末期患者のQOLの改善を目的として応用されています。  

 

<モーズ軟膏の作成に必要な材料 方法>

まずモーズ軟膏を作成します。
患部を洗浄し、自壊した部分以外の正常な皮膚にワセリンなどを塗布します。
自壊した部分を覆うようにモーズ軟膏を塗布し、10分程度放置した後、ガーゼで拭き取り、洗浄して処置が終わります。  

 

ここで症例をご紹介します。 プロフィール:ミニチュア・ダックス、17歳、避妊メス(避妊手術は11歳時) 

img_1218   主訴:左第2乳腺に、増大傾向を示し、底部固着、自壊した乳腺腫瘍を認め、来院。

仮診断:おそらく高悪性度の乳腺腫瘍

治療方針:モーズ軟膏塗布による緩和的治療   img_1202
処置前   img_1199img_1207 モーズ軟膏塗布   img_1217 処置後   自壊し、感染、出血があった部分は、モーズ軟膏により固定され、抑えられているのがわかります。

 

もう少し若く、元気があれば外科切除が第一に選択されますが、
老齢で、積極的な腫瘍組織の外科切除によって予後がさほど延長しないと予測される場合には、
安価で容易に行えるモーズ軟膏は患者にとっても飼い主にとっても非常に良い選択肢であると思います。

 

今後は、寿命を全うするまでモーズ軟膏を定期的に塗布し、QOLを改善することが重要です。  

 

QOLを改善する方法はたくさんあります。
少しでも痛みや苦しみから、解放してあげられるよう一緒に考えましょう。
不安なことがありましたら、どんな小さいことでもご相談下さい。

 

余談ですが、犬や猫において、乳腺腫瘍は、若齢時に避妊手術を行うことで発生リスクが抑制されることが報告されています。

 

✳︎犬の避妊手術のタイミングと乳腺腫瘍発生率の抑制

1回目の発情前の避妊手術 0.05%

2回目の発情前の避妊手術 8%

3回目の発情前の避妊手術 26%

3回目の発情以降の避妊手術 抑制効果なし       Brody RS JAVMA 1983

 

 

当院では、新しく子犬、子猫を迎え入れた方に、

子供を産ませない場合、不妊手術をお勧めしております。

 

疑問点などあれば、パピーパーティや診察時にお聞き下さい。

この記事を書いたひと

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浜松家畜病院

静岡県浜松市の動物病院です。診療対象動物は、犬、猫、ウサギ、ハムスター、フェレットなど。総合診察、予防接種 からがん・アレルギーなどの専門医療、食事や健康管理相談、しつけ相談まで幅広く対応しています。

このブログの監修

武信行紀(たけのぶゆきのり)浜松家畜病院院長

武信行紀(たけのぶゆきのり)

治療方針:恩師の言葉である「慈愛理知」(慈しみと愛をもって動物と飼い主に接し、理論と最新の知識をもって診療に当たる)を胸に、人と動物の絆に貢献します。

経歴:

  • 鳥取県鳥取市出身
  • 1999年 麻布大学獣医学科卒業
  • 2005~2009年 麻布大学腫瘍科レジデント(サブチーフを務める)
  • 2013年 獣医腫瘍科認定医1種取得
  • 2014年 日本獣医がん学会理事就任現在に至る

所属学会・研修:

  • 日本獣医がん学会
  • 獣医麻酔外科学会
  • 獣医整形外科AOprinciplesCorse研修課程終了
  • RECOVER BLS&ALS 研修課程終了

主な執筆・学会発表

  • 2003年~2007年 「犬の健康管理」 ANIMAL WORLD連載
  • 2005年 「拡大乳腺切除および補助的化学療法により,良好な経過が得られた猫乳腺癌の1例.」(第26回動物臨床医学会年次大会)
  • 2006年 「血管周皮腫の臨床的研究」(第27回動物臨床医学会年次大会)
  • 2008年 「外科切除および放射線治療を行った高分化型線維肉腫の2例」(第27回日本獣医がん研究会, JONCOL2008/No.5)
  • 2009年 「特集:血管周皮腫」 (InfoVets 2008/8月号)
  • 2010年 『小動物臨床腫瘍学の実際』 翻訳参加 (Withrow & MacEwen's Small Animal Clinical Oncology 4th ed.)
  • 2010年 「外科切除を行い良好な経過が得られた乳頭状扁平上皮癌の1例」(第30回獣医麻酔外科学会)
  • 2010年 「肝破裂による血腹が見られた猫の肝アミロイド―シスの一例」(第19回中部小動物臨床研究会)
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