こんにちは。獣医師の竹田です。 今回は以前にもご紹介した生まれつきの子犬の心臓病、動脈管開存症(PDA)の症例をご紹介します。 まず、PDAとは胎生期に有する動脈管(大動脈と肺動脈のバイパス血管)が、生まれた後でも残ってしまうことによって起こる、無治療では致死率が高い先天性の心臓病です。 犬のPDAの特徴として、 先天性心臓疾患の中で最も多い 好発犬種は主に小型犬 メスに多い などが挙げられます。 治療は主に、外科的に動脈管を閉じてあげることにより、長期予後が期待できます。 今回の執刀医は、東京の大学で循環器外科を担当する鈴木先生です。 手術時の写真を一部掲載していますので、注意して下さい。 症例 トイプードル、オス、3ヶ月齢、体重1.65kg 主訴:子犬の検診で反跳脈と連続性の機械様心雑音を聴取。 Xray:著しい左心拡大と下行大動脈の拡張、肺血管の拡張が認められます。 心臓超音波検査:左心負荷所見(左心拡大、僧帽弁逆流、LVIDdの増大、E波A波の上昇、大動脈血流速度の軽度増加)と肺動脈内の連続性モザイクが認められます。 診断:左右短絡を呈する動脈管開存症(PDA) 治療:外科療法(麻酔下で開胸、動脈管を剥離し、結紮) 通常、未治療のまま、6ヶ月齢を過ぎると右左短絡を呈し、手術が不適応となります…。 術後は非常に良好! 本人の生命力と早期発見・早期治療、術者の熟練した技術のおかげですね。 今後は健康な子と同様に過ごすことができます。 当院では、月に一度、循環器専門医による診察とセミナーを行い、循環器症例の診断から治療方針まで的確に対応できるよう心掛けています。 最近、咳をするようになった、運動時に疲れやすくなったなど身近で気になることがあれば、一度診察で心雑音の有無を確認しましょう! 下は、チワワのまこちゃん! 以前紹介した動脈管開存症の子で、術後1年を良好に経過しています。 とても幸せそうですね!
犬の動脈管開存症 Part2
このブログの監修
武信行紀(たけのぶゆきのり)
治療方針:恩師の言葉である「慈愛理知」(慈しみと愛をもって動物と飼い主に接し、理論と最新の知識をもって診療に当たる)を胸に、人と動物の絆に貢献します。
経歴:
- 鳥取県鳥取市出身
- 1999年 麻布大学獣医学科卒業
- 2005~2009年 麻布大学腫瘍科レジデント(サブチーフを務める)
- 2013年 獣医腫瘍科認定医1種取得
- 2014年 日本獣医がん学会理事就任現在に至る
所属学会・研修:
- 日本獣医がん学会
- 獣医麻酔外科学会
- 獣医整形外科AOprinciplesCorse研修課程終了
- RECOVER BLS&ALS 研修課程終了
主な執筆・学会発表
- 2003年~2007年 「犬の健康管理」 ANIMAL WORLD連載
- 2005年 「拡大乳腺切除および補助的化学療法により,良好な経過が得られた猫乳腺癌の1例.」(第26回動物臨床医学会年次大会)
- 2006年 「血管周皮腫の臨床的研究」(第27回動物臨床医学会年次大会)
- 2008年 「外科切除および放射線治療を行った高分化型線維肉腫の2例」(第27回日本獣医がん研究会, JONCOL2008/No.5)
- 2009年 「特集:血管周皮腫」 (InfoVets 2008/8月号)
- 2010年 『小動物臨床腫瘍学の実際』 翻訳参加 (Withrow & MacEwen's Small Animal Clinical Oncology 4th ed.)
- 2010年 「外科切除を行い良好な経過が得られた乳頭状扁平上皮癌の1例」(第30回獣医麻酔外科学会)
- 2010年 「肝破裂による血腹が見られた猫の肝アミロイド―シスの一例」(第19回中部小動物臨床研究会)