猫の肺指症候群とは

ネコに特有の病気で、肺腫瘍が指骨先端に転移して起こす症状のことです。

複数の指に同時に起きることが多く、症状は指の腫れと強い痛み、時に出血です。

猫の肺癌は様々な場所に転移しますので、指に限らず皮膚に同様の症状を起こすこともあります。

肺指症候群の予後は不良で、中央生存期間は60日(12~125)と報告されています。

肺指症候群の症例紹介

日本猫 、14才、去勢オス

1ヶ月前から左前脚の薬指の爪切りを嫌がるようになり、近医にて関節炎のサプリをもらっていたそうです。
なかなか治らないため2番目の病院を受診すると、肺癌の疑いがあると言われたとのことです。

主訴:左前足が痛そう

既往歴:特になし

肺指症候群の検査所見

 

体重3.5kg 心拍数122回/分 呼吸数30回/分
一般状態   :やや食欲低下
一般身体検査 :左前肢の第4指の腫脹2cm大、疼痛あり

画像検査   :肺腫瘍・指骨溶解
血液検査   :慢性腎臓病ステージ4

細胞診:(指病変)上皮細胞集塊

 

肺の腫瘍が認められます

 

 

指先の骨溶解が起きています。

指先の細胞診では上皮系細胞(肺癌などの細胞)が多数見られます。

肺指症候群の治療

猫の肺指症候群は呼吸器症状で死亡することが少なく、原発肺腫瘍の外科切除は意義が低いと考えられています。

また転移病変は全身に広がっているため、断指などの外科治療は残存する指の負重増加により生活の質をさらに低下させる可能性があります。

本症例はそれに加えて末期の腎臓病を抱えておりました。

 

そこで、積極的な疼痛緩和治療をお勧めいたしました。

使用した薬剤の一部です。

・フェンタニル・パッチ(貼るタイプの痛み止め)

・ブプレノルフィン(粘膜投与タイプの痛み止め)

・ミルタザピン(皮膚に塗るタイプの食欲増進剤)

 

肺指症候群の経過

初診(発見から1ヶ月) 触ると痛がるが、歩行はできる状態。

〜第30病日       痛み止めが効いて、食欲・元気が出てきた。

〜第62病日      痛みはほとんど無く食欲もあり。腎臓病による痙攣が起き始める。

その後、ほどなくして虹の橋を渡って行きましたが、最期の瞬間まで指の痛みで泣き叫ぶ事はありませんでした。

肺指症候群の猫たちは、ちょっと指に触れるだけで泣き叫ぶほど痛がることもありますが、本症例は疼痛治療が功を奏したと言えるでしょう。

 

がんの治療は治すだけではありません。

予後の悪い病気でも何かできることは必ずあるはずです。

痛みを取り除き、安らかな最期を迎えさせてあげる事も立派な医療だと思います。

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腫瘍の治療など、犬猫の病気の治療をどうすれば良いか分からない場合は、いつでもご相談ください。

あれ??何か腫れてない?
そういえば最近体重が減っているかも・・・・
触ると嫌がるようになった???

等々、何か異変を感じた場合は、当院までご相談下さい!!!

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