症例紹介

肺原発の組織球性肉腫

フーちゃんは8歳のミニチュアシュナウザー

最近、呼吸が荒く咳をするといって来院されました。

身体検査では特に異常は見つかりませんでしたが、

胸部レントゲンで肺に「しこり」が見つかりました。

 

初診時

犬の肺は全部で7葉に分かれています(人は5葉)。

フーちゃんの左の真ん中の肺葉には3.5㎝のしこりがあります。

前縦郭のリンパ節も腫れているようです。

通常なら手術をしないという選択肢もありますが、

相談の上、飼主さんは手術をすることを決心しました。

今回の手術は病理検査と症状の緩和が目的です。

手術ではまず左の肺葉をしこりごと摘出、リンパ節は温存しました。

病理検査の結果は「組織球肉腫」

現在、犬の原発性肺腫瘍では最も治療が難しい癌の一つです。

ただ、手術の後はあんなにつらかった咳と呼吸困難が嘘のように消え、

フーちゃんは元気に走り回れるようになりました。

組織球肉腫は手術と抗がん剤治療で3か月という予後が報告されています。

すでにリンパ節転移がある今回の場合、予後は厳しいと考えられました。

そのため、オーナー様の希望で術後は消炎剤と咳の治療をメインに行うことにしました。

 

ところが、、、

 

フーちゃんはみるみる元気になり、、

 

そのまま10ヵ月間も生存したのです。

 

これは人間でいえば4~5年に値します。

 

組織球肉腫はたいへんむずかしい腫瘍で、

海外ではCCNUという抗がん剤が使用されていますが、

手術で取りきれない場合の生存期間は100日程度、

しっかり切除できて転移がない場合の生存期間は500日以上と報告されています。

 

犬種特異性があり、

フラットコーテッドレトリバー

ゴールデンレトリバー

バーニーズマウンテンドッグ

コーギー

に多いとされていますが、近年日本では

ミニチュアシュナウザーにも増えているようです。

当院でもシュナウザーで数例経験していますが、

シュナウザーの組織球肉腫は比較的おとなしいものが多いように感じています。

 

このような術前診断で確定できない腫瘍では、

 

外科手術が診断と治療を兼ねる事もあります。

 

こんな時、私たちはフーちゃんのような今まで経験した症例をもとに、

 

将来の予測を立ててアドバイスをします。

 

そして、できるだけ飼い主様の目線に立ってご相談するようにしています。

 

 

参考文献:CCNU for the treatment of dogs with histiocytic sarcoma. Skorupski KA,  et al. J Vet Intern Med. 2007.

Long-term survival in dogs with localized histiocytic sarcoma treated with CCNU as an adjuvant to local therapy.

Skorupski KA, et al. Vet Comp Oncol. 2009.

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