症例紹介

2013.03.07

肺原発の組織球性肉腫

フーちゃんは8歳のミニチュアシュナウザー

最近、呼吸が荒く咳をするといって来院されました。

身体検査では特に異常は見つかりませんでしたが、

胸部レントゲンで肺に「しこり」が見つかりました。

 

初診時

犬の肺は全部で7葉に分かれています(人は5葉)。

フーちゃんの左の真ん中の肺葉には3.5㎝のしこりがあります。

前縦郭のリンパ節も腫れているようです。

通常なら手術をしないという選択肢もありますが、

相談の上、飼主さんは手術をすることを決心しました。

今回の手術は病理検査と症状の緩和が目的です。

手術ではまず左の肺葉をしこりごと摘出、リンパ節は温存しました。

病理検査の結果は「組織球肉腫」

現在、犬の原発性肺腫瘍では最も治療が難しい癌の一つです。

ただ、手術の後はあんなにつらかった咳と呼吸困難が嘘のように消え、

フーちゃんは元気に走り回れるようになりました。

組織球肉腫は手術と抗がん剤治療で3か月という予後が報告されています。

すでにリンパ節転移がある今回の場合、予後は厳しいと考えられました。

そのため、オーナー様の希望で術後は消炎剤と咳の治療をメインに行うことにしました。

 

ところが、、、

 

フーちゃんはみるみる元気になり、、

 

そのまま10ヵ月間も生存したのです。

 

これは人間でいえば4~5年に値します。

 

組織球肉腫はたいへんむずかしい腫瘍で、

海外ではCCNUという抗がん剤が使用されていますが、

手術で取りきれない場合の生存期間は100日程度、

しっかり切除できて転移がない場合の生存期間は500日以上と報告されています。

 

犬種特異性があり、

フラットコーテッドレトリバー

ゴールデンレトリバー

バーニーズマウンテンドッグ

コーギー

に多いとされていますが、近年日本では

ミニチュアシュナウザーにも増えているようです。

当院でもシュナウザーで数例経験していますが、

シュナウザーの組織球肉腫は比較的おとなしいものが多いように感じています。

 

このような術前診断で確定できない腫瘍では、

 

外科手術が診断と治療を兼ねる事もあります。

 

こんな時、私たちはフーちゃんのような今まで経験した症例をもとに、

 

将来の予測を立ててアドバイスをします。

 

そして、できるだけ飼い主様の目線に立ってご相談するようにしています。

 

 

参考文献:CCNU for the treatment of dogs with histiocytic sarcoma. Skorupski KA,  et al. J Vet Intern Med. 2007.

Long-term survival in dogs with localized histiocytic sarcoma treated with CCNU as an adjuvant to local therapy.

Skorupski KA, et al. Vet Comp Oncol. 2009.

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浜松家畜病院

静岡県浜松市の動物病院です。診療対象動物は、犬、猫、ウサギ、ハムスター、フェレットなど。総合診察、予防接種 からがん・アレルギーなどの専門医療、食事や健康管理相談、しつけ相談まで幅広く対応しています。

監修

武信行紀(たけのぶゆきのり)浜松家畜病院院長

武信行紀(たけのぶゆきのり)

治療方針:恩師の言葉である「慈愛理知」(慈しみと愛をもって動物と飼い主に接し、理論と最新の知識をもって診療に当たる)を胸に、人と動物の絆に貢献します。

経歴:

  • 鳥取県鳥取市出身
  • 1999年 麻布大学獣医学科卒業
  • 2005~2009年 麻布大学腫瘍科レジデント(サブチーフを務める)
  • 2013年 獣医腫瘍科認定医1種取得
  • 2014年 日本獣医がん学会理事就任現在に至る

所属学会・研修:

  • 日本獣医がん学会
  • 獣医麻酔外科学会
  • 獣医整形外科AOprinciplesCorse研修課程終了
  • RECOVER BLS&ALS 研修課程終了

主な執筆・学会発表

  • 2003年~2007年 「犬の健康管理」 ANIMAL WORLD連載
  • 2005年 「拡大乳腺切除および補助的化学療法により,良好な経過が得られた猫乳腺癌の1例.」(第26回動物臨床医学会年次大会)
  • 2006年 「血管周皮腫の臨床的研究」(第27回動物臨床医学会年次大会)
  • 2008年 「外科切除および放射線治療を行った高分化型線維肉腫の2例」(第27回日本獣医がん研究会, JONCOL2008/No.5)
  • 2009年 「特集:血管周皮腫」 (InfoVets 2008/8月号)
  • 2010年 『小動物臨床腫瘍学の実際』 翻訳参加 (Withrow & MacEwen's Small Animal Clinical Oncology 4th ed.)
  • 2010年 「外科切除を行い良好な経過が得られた乳頭状扁平上皮癌の1例」(第30回獣医麻酔外科学会)
  • 2010年 「肝破裂による血腹が見られた猫の肝アミロイド―シスの一例」(第19回中部小動物臨床研究会)
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