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久しぶりの更新です。

獣医師の竹田です。

今年も残すところあと2ヶ月ですね。気づけば浜松に来て3年半が経ち、いろいろな飼い主さんとも親しくして貰い、すっかり第2の故郷です。

関係ないですが、去年くらいから海釣りにはまってます。夏から秋はブリの子供(アブコ、イナダ)を釣りにあちこち行ってます(ほとんど坊主ですが…)。

海はいいですね。たまに悩ましい症例が来て、考え込んでしまう日には、頭の中をリセットして、結論を出しやすくしてくれます。

 

さて、先日、悩ましい症例が来たので、ちょっと紹介しましょうか。

症例は、小型犬、10歳、避妊メス

主訴は、最近、尿失禁するようになった、元気と食欲はある

 

尿失禁をする子、たまに居ます。

避妊手術後、雌性ホルモン不足で尿道括約筋機能が低下して起こる尿失禁や、水の飲み過ぎで起こる尿失禁。ほとんどは後者ですが。

避妊手術後の尿失禁は、通常、術後3ー4年で発症、大型犬で早期に手術をした場合にリスクが上がるようです(避妊手術にもデメリットはありますが、子宮蓄膿症や乳腺癌予防のためおすすめしてます)。だから大型犬の避妊手術のタイミングは、小型犬に比べ、遅めに行いますよね。

 

この症例は、どうやら多飲(飲水量:>100mL/kg/day)が原因のようです。

日々の生活で飲水量の変化って結構大事です。意外と病気のサインだったりします。

 

多飲多尿がよく見られる糖尿病や腎臓病、副腎皮質機能亢進症などの可能性がないか、視診(毛や皮膚の状態など)、血液検査、エコー検査、尿検査で診断を進めます。

この症例は、低張尿(尿が薄い)が見られましたが、血液検査やエコー検査でわかる病気ではありませんでした。除外診断です。

 

考えられる病気の一つに尿崩症があります。

抗利尿ホルモンという尿量を調節するホルモンが下垂体(脳の一部)で分泌されてますが、このホルモンが不足したり、腎臓でこのホルモンの感受性が低下すると尿量が増え、飲水量も増えてしまいます。いわゆる中枢性尿崩症と腎性尿崩症です。

腎臓はすでに問題ないことがわかってますので、中枢性尿崩症が疑われます。

抗利尿ホルモンを点眼で投薬し、尿が濃縮されるかを見ました。ちなみに、抗利尿ホルモンが過剰になると、尿量が減り、体内の水分量が過剰になり、血中ナトリウム濃度が低くなり、水中毒、神経症状を発症する危険があるので、血中電解質(特にナトリウム濃度)は注意深くモニターします。

 

身体って複雑ですよね…。

 

この症例はこの試験で、尿の濃縮が確認でき、結果的に尿失禁は抗利尿ホルモン投与後3日ほどで抑えることができました。

残る疑問は下垂体に病変があるかどうかです。症例数が少なく、報告も少ないですが、とある報告によると中枢性尿崩症と診断された犬の約3割に下垂体腫瘤が見つかったそうです。この情報を元に、原因を探りたいとのご意向でMRIを撮ることになりました。

 

 

結果的には何もなく、今は尿失禁から解放され、元気に過ごしています。

 

また一つ、難解なブログを書いてしまいました。次は釣果報告でも書きましょうかね。

以上です。

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こんにちは。獣医師の竹田です。

今回は、犬の前立腺腫瘍について紹介します。

 

前立腺にできる悪性腫瘍は、移行上皮癌や腺癌があります。

犬での挙動は、局所浸潤性と転移性が強く、尿道を経由した周囲組織への浸潤、また局所のリンパ節や肺、体軸骨格への転移も高率に起きてしまいます。

現在、これといった根治を目指す治療法はなく、緩和的に治療することがほとんどですが、最近興味深い報告がなされました。

 

「BRAF Mutations in canine cancers」

犬の前立腺癌と移行上皮癌は、とある遺伝子(BRAF)変異が高率に起きているという内容です。ちなみに正常細胞では一切、変異は認められないようです。

この報告によって、BRAF変異が認められれば、腫瘍(移行上皮癌または前立腺癌)であることは確定的で、採尿した尿沈渣で可能であると、低侵襲にかつ簡単に診断できるようになりました。

また、膀胱腫瘍のBRAF変異が人と犬で同様であることもわかり、BRAF変異と悪性転換との関連が示唆されました。

 

個人的な見解ですが、同様の遺伝子変異であれば、抗がん剤感受性も同様である可能性があります。

 

ここで、症例を紹介します。

症例:ヨーキー、11歳、去勢オス、4.4kg

主訴:便のしぶり、排便障害

エコー検査:前立腺の不整な腫大と石灰化、領域リンパ節腫大なし

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X線検査:前立腺領域の石灰化と腫大、直腸の背側変位、肺や骨など転移所見なし

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尿沈渣の細胞診:悪性上皮系腫瘍を疑う(大小不同の核、NC比の増大、2核の細胞など)

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尿沈渣のBRAF変異:陽性

 

診断:前立腺に発生した移行上皮癌または腺癌

本来であれば、移行上皮癌と腺癌の区別を、病理組織診断によって行いたいのですが、生検時の腫瘍の播種、麻酔、開腹などデメリットがメリットを大きく上回るため、あまり行われないのが現状です。

治療:化学療法(ゲムシタビン+カルボプラチン+cox2阻害薬+マロピタント+デキサメタゾン+輸液)

緩和的放射線療法も有効ですが、高価で遠距離であることから選択肢から外れました。

また、前立腺の外科切除は、獣医療では高い合併症率の割に良くもない治療成績のため、あまり積極的には行われないのが現状です。

 

参考文献:Combined gemcitabine and carboplatin therapy for carcinomas in dogs

要約:3週毎、ゲムシタビン2mg/kg day1,8、カルボプラチン10mg/kg day1、転移のある前立腺癌のみ完全寛解(104日)、骨髄毒性や消化器毒性は寛容的

 

人の膀胱腫瘍の抗がん剤治療の中では、ゲムシタビンとシスプラチンによるGC療法が最も有効とされており、やや緩和的な代替レジメンとしてゲムシタビン+カルボプラチン療法があるようです。(3週毎 ゲムシタビン1000mg/m2 day1,8 カルボプラチンAUC4.5 day1  デキサメタゾン アプレピタント 輸液)

 

現在、治療中のわんちゃんは、排便障害などの症状はなくなり、腫瘍も部分寛解しております。

今後もQOLの維持・向上を目指し、よりよい治療を続ける予定です。以上です。

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こんにちは。獣医師の竹田です。

今回は当院で初めて、犬の原発性上皮小体機能亢進症経皮的エタノール注入療法(PEIT)を行いましたので紹介したいと思います。

原発性上皮小体機能亢進症とは、上皮小体(副甲状腺)ホルモン(パラソルモン)過剰分泌によって、血中Ca濃度が上昇し、多飲多尿食欲低下腎結石膀胱結石などを引き起こします。

詳しくは、骨からCaを吸収、腎臓からCaの排泄抑制、小腸からCaの吸収促進によって、総じて血中Ca濃度を上昇させます。

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診断は、血液検査、視診、触診、エコー検査等を行い、除外診断と腫大した上皮小体結節を確認します。

治療は、内科治療(輸液、プレドニン、フロセミド、カルシトニンなど)や外科治療(上皮小体を甲状腺ごと一括して切除)の他に、比較的新しい治療法として経皮的エタノール注入療法が加わりました。(下記参考文献と要約)

 

参考文献:Outcomes for dogs with primary hyperparathyroidism following treatment with percutaneous ultrasoundguided ethanol ablation of presumed functional parathyroid nodules27 cases (20082011)

(治療成績)

外科切除:3/4個まで摘出可能、奏功率94%、奏功期間中央値561日

経皮的エタノール注入法(PEIT):奏功率85%、奏功期間中央値540日、麻酔時間30分、必要であれば追加治療

(副作用)

外科切除:低Ca血症(40%)、発咳、出血、嚥下障害など

経皮的エタノール注入法:低Ca血症(22%)、鳴き声の変化、発咳、癒着

 

ここで症例を紹介します。

症例:M・ダックス、去勢オス、15歳、6.4kg

主訴:血尿、食欲不振、多飲多尿、ときどき元気消失

血液検査:Ca:16.9mg/dL(8-12mg/dL)、P:2.2mg/dL、intactPTH:7.9pg/mL(8.0-35pg/dL)、Alb:3.3mg/dL、ALT↑、ALP↑

エコー検査:右側甲状腺の頭側領域に腫大した上皮小体結節を認めた

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診断:膀胱結石(シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム)、原発性上皮小体機能亢進症

治療:内科治療を先行し、高Ca血症(14.0mg/dL前後)と食欲不振や元気消失を繰り返すため、PEITを行った

PEIT:全身麻酔時間20分、95%エタノール0.4mLを超音波ガイド下で経皮的に腫大した上皮小体結節に注入

術後経過として、低Ca血症(6mg/dL前後)を発症してしまい、Ca製剤の投与、ビタミンD製剤の経口投与を行いました。現在2ヶ月が経過し、Ca補充療法を漸減中ではあるが、一般状態は良好で、QOLは改善しました。

 

当院ではもう一頭、原発性上皮小体機能亢進症に対してPEITを実施しており、治療経過観察中です。

 

ちなみに、人の方でPEITは1990年代後半から行われており、術後の癒着が問題となったため、今では新たな治療法が導入され、減少傾向にあるみたいです。

具体的には、診断技術の進歩(上皮小体シンチなど)によって、腫大した上皮小体のみ摘出するのが主流であり、切除困難であればシナカルセット(カルシウム受容体の感受性増加によるPTH分泌抑制)内服、直接ビタミンD注入療法やエタノール注入療法は、外科切除やシナカルセットが不適応になった場合に限って行われるようです。

 

人の医療の進歩には圧倒されてしまいますが、人での良い治療法は、慎重に、前向きに獣医療への導入を模索していきたいですね。以上です。

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こんにちは。獣医師の竹田です。

1年間の麻布大学専科研修を終え、早2ヶ月が経ちました。

これから、いくつか大学で得た(盗んだ?)いい診断・治療法を提供しようと思います。

よろしくお願いします。

 

さて、今回は、犬の脾臓腫瘤について紹介します。

犬の脾臓腫瘤は、今まで「2/3の法則」があると言われてました。

脾臓腫瘤のうち2/3は悪性腫瘍、その中でもまた2/3は極めて予後の悪い血管肉腫、という法則です。

つまり、犬の脾臓腫瘤が見つかった場合、予後が悪い病気である可能性が高いということを念頭に飼い主様と治療方針を決定していたのです。

予後が悪いのであれば治療はしないと考える方もいるであろうし、仮に治療すれば救えるワンちゃんも救えていなかったかもしれません。

 

しかし、最近、犬の脾臓腫瘤は約半分弱が悪性腫瘍であり、また悪性腫瘍のうち約半分くらいが血管肉腫という疫学データが報告されました。

日本の場合、「1/2の法則」の方がふさわしい、とのことです。

当院で治療した脾臓腫瘤も、悪性腫瘍より良性病変であったケースが多く、一致します。

良性病変であっても大きければ、いずれ腹腔内出血を起こし、命を落とす危険があり、そういうワンちゃん達に前向きに治療を勧められるデータです。

 

ここで症例を紹介します。

 ※一部手術写真があります。

 

症例:ミニチュアダックスフンド、13歳、去勢オス

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主訴:昨夜から嘔吐、食欲なし

エコー検査:わずかな腹腔内出血と複数の脾臓腫瘤(5cm大、1.5cm大)、肝臓は低エコー性に粗像を認めた

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x線検査:明らかな転移所見認めず

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血液検査:ALT:278U/L(10-125)、ALP:237U/L(23-212)

 

治療:緊急を有するため、脾臓摘出を行った

 

術中所見:大網が癒着しており、一部自壊した複数の脾臓腫瘤と、腫大した脾リンパ節、肝臓に複数の結節が認められた

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病理組織診断:脾臓腫瘤は骨髄脂肪腫、リンパ節はヘモジデリン沈着、肝臓は結節性過形成

 

術中所見では、転移を有する悪性腫瘍が疑われたのですが、結果的に全て良性病変でした。ちなみに細胞診では、顆粒を有する独立円形細胞が多く認められ、稀ではあるが、肥満細胞腫も疑っていたのですが、結果的にヘモジデリン貪食マクロファージでした。

 

飼い主様にも良い報告ができ、ワンちゃんも元気に元の生活に戻ることができました!

 

以上、前向きに治療して助かった犬の脾臓腫瘤のお話でした。

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こんにちは。獣医師の竹田です。

 

最近となってはめったに見ない、フィラリア感染症のワンちゃんが見つかりました。

やはり予防歴はありません。

検査キットでは強陽性を示したので、心エコー検査を行いました。

肺動脈内に虫体は少数確認(イコールサイン)されたものの、狭窄所見(肺動脈弁での明らかな異常、心室中隔の扁平化、肺動脈拡張など)は見られませんでした。

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本人は無症状かつ元気なので、とある論文を参考に内科治療を行うことになりました。

参考文献「Combined ivermectin and doxycycline treatment has microfilaricidal and adulticidal activity against Dirofilaria immitis in experimentally infected dogs」

引用「Treatment with ivermectin (IVM; 6 μg/kg per os weekly) combined with doxycycline (DOXY; 10 mg/kg/day orally from Weeks 0–6, 10–12, 16–18, 22–26 and 28–34) resulted in a significantly faster decrease of circulating microfilariae and higher adulticidal activity compared with either IVM or DOXY alone. 」

 

なぜ、抗生剤を投与するのかというと、フィラリアの中にはボルバキア菌と共存しているものがあり、フィラリアの生殖器にも存在しているため、ミクロフィラリアにもボルバキア菌が受け継がれます。そのボルバキア菌に対する抗生剤を投与することで、ボルバキア菌保有フィラリアは死滅するという原理らしいです。

以前は、内科治療によって駆虫されたフィラリアの死体が肺動脈より先で塞栓し、命に関わる肺高血圧症や血栓症を引き起こすリスクがあると言われていましたが、上記の報告によれば治療は寛容的で、副作用も一切なかったみたいです。

 

やはりフィラリア予防をしていなければ感染してしまうリスクがあるということを肝に銘じた症例でした。

外に出なくても、フィラリアの宿主である蚊は寄ってきてしまいます。

フィラリアに限らず、ノミ、マダニの駆虫とワクチンでしっかり予防しましょう。