Newsねこブログ症例紹介

2019.07.22

猫の変な腎不全

結構多い猫の腎不全。
急に手足の筋力が低下し、起立困難を呈した症例について取り上げたいと思います。  

症例

猫、キジトラ、オス、5歳
主訴:元気・食欲がない、意識ははっきりしているが、全く立てない、野外に出る、尿が溜まっている
野外に出るので排尿は不明でしたが、猫下部尿路疾患(FLUTD)、特発性膀胱炎がまず疑われました。

尿道カテーテルが留置できたので、溜まっていた尿(血尿)を抜き、膀胱洗浄。
同時に血液検査も実施。

 血液検査:白血球:28300/μL(5000-18300)
BUN:>130mg/dL(16-36)
CREA:12.4mg/dL(0.8-2.4)
PHOS:14.6mg/dL(3.1-7.5)
Ca:5.2mg/dL(7.8-11.3)
Na:148mmol/L(150-165)
K:>10mmol/L(3.5-5.8)
Cl:110mmol/L(112-129)

状態としては、かなり悪い腎臓病でした。

IRISの急性腎不全のグレード分類では、5/5(下記参照)。 

スクリーンショット 2017-04-18 17.11.27

 

 いかに早く尿を作らせるか、腎機能を回復させられるかが治療のキーとなります。 しかし、この子の場合、筋力が低下し、起立不能、足先を触ると過剰に反応しました。   僕なりの推測になりますが、この子が苦しんでいた原因として、低カルシウム血症高カリウム血症を疑いました。  
<低カルシウム血症(特に6.5mg/dL以下で)>

症状指や四肢にチクチクするような筋肉痛、発作、不整脈など

治療:グルコン酸カルシウム溶液の静脈内投与やチアジド系利尿薬投与、ビタミンD補充療法など

<高カリウム血症(特に9.5mmol/L以上で)>

症状筋力低下や四肢の麻痺知覚過敏、不整脈など

治療:グルコース+インスリン製剤の投与、重炭酸ナトリウムの投与(体内をアルカリ性に傾ける)、グルコン酸カルシウム溶液の静脈内投与(心筋毒性の保護)、利尿による排泄など

 

腎不全では、腎機能の低下によってリンカリウムは体外へ排出できなくなり、
高カリウム血症代謝性アシドーシス高リン血症になります。  

今回のような腎臓病に伴う低カルシウム血症の機序としては、
①腎臓でのビタミンD産生の低下による腸管でのカルシウムの吸収不良
②リンの上昇に拮抗したカルシウムの低下 が考えられます。

 
治療:ソルデム1輸液(カリウムがなく、利尿作用のあるグルコース、アルカリ性に傾く重炭酸イオンを含む)
メイロン2.0mEq/kg/IV、
リン吸着剤、ラプロス(ベラプロスト)  

とにかくカリウムを下げることとカルシウムを上げることに専念。
しかし、積極的なCa製剤の補充療法は、高リン血症時には禁忌です。
リンを排泄させるよう治療しなくてはいけません。  

翌日、立って動いていました。ここまで良くなってくれるとは、予想外でした。
血液検査もBUNとCREA以外、基準値範囲内。

今回、腎臓病でリンとカリウムが異常に高値だと低カルシウムとなって、
結果的に知覚過敏と四肢の筋肉麻痺になることがあるのだと分かりました。

意識障害や、起立不能などなにか異変があったときは、
珍しいケースですが腎臓の検査もした方がいいのかもしれません。

 

 

 

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あんなにかわいいのに、なぜ見つからないのだろう・・・・?

あれ???
見つける努力してないのかな?
可愛すぎて、看板猫でもいいかと思ってしまう
今日この頃・・・・
でも彼の幸せを考えればきっと一般家庭に・・・・・

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子供とも仲良し

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浜松家畜病院

静岡県浜松市の動物病院です。診療対象動物は、犬、猫、ウサギ、ハムスター、フェレットなど。総合診察、予防接種 からがん・アレルギーなどの専門医療、食事や健康管理相談、しつけ相談まで幅広く対応しています。

このブログの監修

武信行紀(たけのぶゆきのり)浜松家畜病院院長

武信行紀(たけのぶゆきのり)

治療方針:恩師の言葉である「慈愛理知」(慈しみと愛をもって動物と飼い主に接し、理論と最新の知識をもって診療に当たる)を胸に、人と動物の絆に貢献します。

経歴:

  • 鳥取県鳥取市出身
  • 1999年 麻布大学獣医学科卒業
  • 2005~2009年 麻布大学腫瘍科レジデント(サブチーフを務める)
  • 2013年 獣医腫瘍科認定医1種取得
  • 2014年 日本獣医がん学会理事就任現在に至る

所属学会・研修:

  • 日本獣医がん学会
  • 獣医麻酔外科学会
  • 獣医整形外科AOprinciplesCorse研修課程終了
  • RECOVER BLS&ALS 研修課程終了

主な執筆・学会発表

  • 2003年~2007年 「犬の健康管理」 ANIMAL WORLD連載
  • 2005年 「拡大乳腺切除および補助的化学療法により,良好な経過が得られた猫乳腺癌の1例.」(第26回動物臨床医学会年次大会)
  • 2006年 「血管周皮腫の臨床的研究」(第27回動物臨床医学会年次大会)
  • 2008年 「外科切除および放射線治療を行った高分化型線維肉腫の2例」(第27回日本獣医がん研究会, JONCOL2008/No.5)
  • 2009年 「特集:血管周皮腫」 (InfoVets 2008/8月号)
  • 2010年 『小動物臨床腫瘍学の実際』 翻訳参加 (Withrow & MacEwen's Small Animal Clinical Oncology 4th ed.)
  • 2010年 「外科切除を行い良好な経過が得られた乳頭状扁平上皮癌の1例」(第30回獣医麻酔外科学会)
  • 2010年 「肝破裂による血腹が見られた猫の肝アミロイド―シスの一例」(第19回中部小動物臨床研究会)
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