静岡/浜松/動物病院/犬/猫/がん/アトピー/フィラリア予防/ワクチン/予防接種/健康診断

浜松家畜病院浜松家畜病院

News 症例紹介

最新の記事一覧

こんにちは。獣医師の竹田です。

今回は、犬の前立腺腫瘍について紹介します。

 

前立腺にできる悪性腫瘍は、移行上皮癌や腺癌があります。

犬での挙動は、局所浸潤性と転移性が強く、尿道を経由した周囲組織への浸潤、また局所のリンパ節や肺、体軸骨格への転移も高率に起きてしまいます。

現在、これといった根治を目指す治療法はなく、緩和的に治療することがほとんどですが、最近興味深い報告がなされました。

 

「BRAF Mutations in canine cancers」

犬の前立腺癌と移行上皮癌は、とある遺伝子(BRAF)変異が高率に起きているという内容です。ちなみに正常細胞では一切、変異は認められないようです。

この報告によって、BRAF変異が認められれば、腫瘍(移行上皮癌または前立腺癌)であることは確定的で、採尿した尿沈渣で可能であると、低侵襲にかつ簡単に診断できるようになりました。

また、膀胱腫瘍のBRAF変異が人と犬で同様であることもわかり、BRAF変異と悪性転換との関連が示唆されました。

 

個人的な見解ですが、同様の遺伝子変異であれば、抗がん剤感受性も同様である可能性があります。

 

ここで、症例を紹介します。

症例:ヨーキー、11歳、去勢オス、4.4kg

主訴:便のしぶり、排便障害

エコー検査:前立腺の不整な腫大と石灰化、領域リンパ節腫大なし

unnamed

X線検査:前立腺領域の石灰化と腫大、直腸の背側変位、肺や骨など転移所見なし

IM-0001-2002

尿沈渣の細胞診:悪性上皮系腫瘍を疑う(大小不同の核、NC比の増大、2核の細胞など)

P1120401

尿沈渣のBRAF変異:陽性

 

診断:前立腺に発生した移行上皮癌または腺癌

本来であれば、移行上皮癌と腺癌の区別を、病理組織診断によって行いたいのですが、生検時の腫瘍の播種、麻酔、開腹などデメリットがメリットを大きく上回るため、あまり行われないのが現状です。

治療:化学療法(ゲムシタビン+カルボプラチン+cox2阻害薬+マロピタント+デキサメタゾン+輸液)

緩和的放射線療法も有効ですが、高価で遠距離であることから選択肢から外れました。

また、前立腺の外科切除は、獣医療では高い合併症率の割に良くもない治療成績のため、あまり積極的には行われないのが現状です。

 

参考文献:Combined gemcitabine and carboplatin therapy for carcinomas in dogs

要約:3週毎、ゲムシタビン2mg/kg day1,8、カルボプラチン10mg/kg day1、転移のある前立腺癌のみ完全寛解(104日)、骨髄毒性や消化器毒性は寛容的

 

人の膀胱腫瘍の抗がん剤治療の中では、ゲムシタビンとシスプラチンによるGC療法が最も有効とされており、やや緩和的な代替レジメンとしてゲムシタビン+カルボプラチン療法があるようです。(3週毎 ゲムシタビン1000mg/m2 day1,8 カルボプラチンAUC4.5 day1  デキサメタゾン アプレピタント 輸液)

 

現在、治療中のわんちゃんは、排便障害などの症状はなくなり、腫瘍も部分寛解しております。

今後もQOLの維持・向上を目指し、よりよい治療を続ける予定です。以上です。