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症例紹介

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こんにちは。獣医師の竹田です。

1年間の麻布大学専科研修を終え、早2ヶ月が経ちました。

これから、いくつか大学で得た(盗んだ?)いい診断・治療法を提供しようと思います。

よろしくお願いします。

 

さて、今回は、犬の脾臓腫瘤について紹介します。

犬の脾臓腫瘤は、今まで「2/3の法則」があると言われてました。

脾臓腫瘤のうち2/3は悪性腫瘍、その中でもまた2/3は極めて予後の悪い血管肉腫、という法則です。

つまり、犬の脾臓腫瘤が見つかった場合、予後が悪い病気である可能性が高いということを念頭に飼い主様と治療方針を決定していたのです。

予後が悪いのであれば治療はしないと考える方もいるであろうし、仮に治療すれば救えるワンちゃんも救えていなかったかもしれません。

 

しかし、最近、犬の脾臓腫瘤は約半分弱が悪性腫瘍であり、また悪性腫瘍のうち約半分くらいが血管肉腫という疫学データが報告されました。

日本の場合、「1/2の法則」の方がふさわしい、とのことです。

当院で治療した脾臓腫瘤も、悪性腫瘍より良性病変であったケースが多く、一致します。

良性病変であっても大きければ、いずれ腹腔内出血を起こし、命を落とす危険があり、そういうワンちゃん達に前向きに治療を勧められるデータです。

 

ここで症例を紹介します。

 ※一部手術写真があります。

 

症例:ミニチュアダックスフンド、13歳、去勢オス

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主訴:昨夜から嘔吐、食欲なし

エコー検査:わずかな腹腔内出血と複数の脾臓腫瘤(5cm大、1.5cm大)、肝臓は低エコー性に粗像を認めた

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x線検査:明らかな転移所見認めず

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血液検査:ALT:278U/L(10-125)、ALP:237U/L(23-212)

 

治療:緊急を有するため、脾臓摘出を行った

 

術中所見:大網が癒着しており、一部自壊した複数の脾臓腫瘤と、腫大した脾リンパ節、肝臓に複数の結節が認められた

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病理組織診断:脾臓腫瘤は骨髄脂肪腫、リンパ節はヘモジデリン沈着、肝臓は結節性過形成

 

術中所見では、転移を有する悪性腫瘍が疑われたのですが、結果的に全て良性病変でした。ちなみに細胞診では、顆粒を有する独立円形細胞が多く認められ、稀ではあるが、肥満細胞腫も疑っていたのですが、結果的にヘモジデリン貪食マクロファージでした。

 

飼い主様にも良い報告ができ、ワンちゃんも元気に元の生活に戻ることができました!

 

以上、前向きに治療して助かった犬の脾臓腫瘤のお話でした。

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こんにちは。獣医師の竹田です。

 

最近となってはめったに見ない、フィラリア感染症のワンちゃんが見つかりました。

やはり予防歴はありません。

検査キットでは強陽性を示したので、心エコー検査を行いました。

肺動脈内に虫体は少数確認(イコールサイン)されたものの、狭窄所見(肺動脈弁での明らかな異常、心室中隔の扁平化、肺動脈拡張など)は見られませんでした。

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本人は無症状かつ元気なので、とある論文を参考に内科治療を行うことになりました。

参考文献「Combined ivermectin and doxycycline treatment has microfilaricidal and adulticidal activity against Dirofilaria immitis in experimentally infected dogs」

引用「Treatment with ivermectin (IVM; 6 μg/kg per os weekly) combined with doxycycline (DOXY; 10 mg/kg/day orally from Weeks 0–6, 10–12, 16–18, 22–26 and 28–34) resulted in a significantly faster decrease of circulating microfilariae and higher adulticidal activity compared with either IVM or DOXY alone. 」

 

 

以前は、内科治療によって駆虫されたフィラリアの死体が肺動脈より先で塞栓し、命に関わる肺高血圧症や血栓症を引き起こすリスクがあると言われていましたが、上記の報告によれば治療は寛容的で、副作用も一切なかったみたいです。

 

やはりフィラリア予防をしていなければ感染してしまうリスクがあるということを肝に銘じた症例でした。

外に出なくても、フィラリアの宿主である蚊は寄ってきてしまいます。

フィラリアに限らず、ノミ、マダニの駆虫とワクチンでしっかり予防しましょう。

 

 

 

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こんにちは。獣医師の竹田です。

今まで外科のお話が多かったので、たまには内科のお話にしようと思います。

さて今回は、猫の病気で有名な腎不全の中でも、急に手足の筋力が低下し、起立困難を呈した症例について取り上げたいと思います。

 

症例:猫、キジトラ、オス、5歳

主訴:元気・食欲がない、意識ははっきりしているが、全く立てない、野外に出る、尿が溜まっている

野外に出るので排尿は不明でしたが、猫下部尿路疾患(FLUTD)、特発性膀胱炎がまず疑われました。

尿道カテーテルが留置できたので、溜まっていた尿(血尿)を抜き、膀胱洗浄。

同時に血液検査も実施。

 

血液検査:白血球:28300/μL(5000-18300)、BUN:>130mg/dL(16-36)、CREA:12.4mg/dL(0.8-2.4)、PHOS:14.6mg/dL(3.1-7.5)、Ca:5.2mg/dL(7.8-11.3)、Na:148mmol/L(150-165)、K:>10mmol/L(3.5-5.8)、Cl:110mmol/L(112-129)

状態としては、かなり悪い腎臓病でした。 IRISの急性腎不全のグレード分類では、5/5(下記参照)。

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いかに早く尿を作らせるか、腎機能を回復させられるかが治療のキーとなります。

しかし、この子の場合、筋力が低下し、起立不能、足先を触ると過剰に反応しました。

 

僕なりの推測になりますが、この子が苦しんでいた原因として、低カルシウム血症高カリウム血症を疑いました。

 

低カルシウム血症(特に6.5mg/dL以下で)

症状:指や四肢にチクチクするような筋肉痛、発作、不整脈など

治療:グルコン酸カルシウム溶液の静脈内投与やチアジド系利尿薬投与、ビタミンD補充療法など

高カリウム血症(特に9.5mmol/L以上で)

症状:筋力低下や四肢の麻痺知覚過敏、不整脈など

治療:グルコース+インスリン製剤の投与、重炭酸ナトリウムの投与(体内をアルカリ性に傾ける)、グルコン酸カルシウム溶液の静脈内投与(心筋毒性の保護)、利尿による排泄など

 

腎不全では、腎機能の低下によってリンカリウムは体外へ排出できなくなり、高カリウム血症代謝性アシドーシス高リン血症になります。

 

今回のような腎臓病に伴う低カルシウム血症の機序としては、

腎臓でのビタミンD産生の低下による腸管でのカルシウムの吸収不良

リンの上昇に拮抗したカルシウムの低下 が考えられます。

 

治療:ソルデム1輸液(カリウムがなく、利尿作用のあるグルコース、アルカリ性に傾く重炭酸イオンを含む)、メイロン2.0mEq/kg/IV、リン吸着剤、ラプロス(ベラプロスト)

 

とにかくカリウムを下げることとカルシウムを上げることに専念。

でもここでやってはいけないのがカルシウム製剤の投与。リンとカルシウムの値を掛け算して70を超えると石灰化を引き起こすからです。この子の場合すでに70を超えてます。

またカルシウムイオンはアルカリ性で石灰化します。リンを動かすしかありません。

 

翌日、立って動いていました。正直びっくりしました。ここまで良くなってくれるとは、頑張った甲斐がありました。

血液検査もBUNとCREA以外、基準値範囲内。

今回、腎臓病でリンとカリウムが異常に高値だと低カルシウムとなって、結果的に知覚過敏と四肢の筋肉麻痺になることがあるのだと分かりました。

今後も注意深い観察が必要ですが、まだ若いのでいち早く元の生活に戻って欲しいと願います。

以上、変な猫の腎不全のお話でした。

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2017.2.20

口のできもの

こんにちは。獣医師の竹田です。

今回は、口にできものができた犬の症例について紹介したいと思います。

 

症例:Mix、7歳、去勢オス

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主訴:下顎先端にできものができ、一ヶ月間で大きくなってきた

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X線検査:局所の明らかな骨融解像は、認められず

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細胞診:細胞集塊は採取されず

 

治療方針を決定するため、麻酔下で一部切除生検を実施

 

病理組織診断:棘細胞エナメル上皮腫(歯肉に発生する歯原性上皮由来の腫瘍で、転移はしないが、局所の骨組織に浸潤するため、場合によっては一部顎骨の切除も必要となる)

 

治療:外科切除(下顎切歯レベルの腫瘍の辺縁切除と底部骨組織の搔爬)

ちなみに放射線感受性が高いため、放射線治療も有効ですが、高価であることと遠出が必要です。

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術前

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術後

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切歯は無くなりましたが、外貌の変化はほとんどなく、また局所麻酔も使っているため、術後は何事もなかったかのように綺麗な顔で退院しました。

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以上、外科治療が有効な腫瘍のお話でした。

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こんにちは。

獣医師の竹田です。

今回は、自壊した体表部の腫瘍の緩和的な治療として、モーズ軟膏を紹介したいと思います。

参考文献:「体表の自壊した腫瘤に対するMohs ペーストの有用性」

 

一般的に、体表部にできた腫瘍の第一選択となる治療は、外科切除です。

しかし、外科切除によるメリット(即座に腫瘍組織を最大限摘出できるなど)、デメリット(麻酔が必要、侵襲性がある、一時的なQOLの低下など)を考えると、中にはデメリットが上回ってしまう症例もいます。

そういう場合に良いとされる緩和的な治療方法が、モーズ軟膏です。

 

モーズ軟膏は、1930年代にアメリカの外科医モーズが考案し、皮膚がんなどを化学的に固定して腫瘍からの出血、感染、悪臭や疼痛などを抑制し、末期患者のQOLの改善を目的として応用されています。

 

モーズ軟膏の作成に必要な材料

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方法

まずモーズ軟膏を作成します。

患部を洗浄し、自壊した部分以外の正常な皮膚にワセリンなどを塗布します。

自壊した部分を覆うようにモーズ軟膏を塗布し、10分程度放置した後、ガーゼで拭き取り、洗浄して処置が終わります。

 

ここで症例をご紹介します。

プロフィール:ミニチュア・ダックス、17歳、避妊メス(避妊手術は11歳時

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主訴:左第2乳腺に、増大傾向を示し、底部固着、自壊した乳腺腫瘍を認め、来院。

仮診断:おそらく高悪性度の乳腺腫瘍

治療方針:モーズ軟膏塗布による緩和的治療

 

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処置前

 

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モーズ軟膏塗布

 

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処置後

 

自壊し、感染、出血があった部分は、モーズ軟膏により固定され、抑えられているのがわかります。

もう少し若く、元気があれば外科切除が第一に選択されますが、老齢で、積極的な腫瘍組織の外科切除によって予後がさほど延長しないと予測される場合には、安価で容易に行えるモーズ軟膏は患者にとっても飼い主にとっても非常に良い選択肢であると思います。

今後は、寿命を全うするまでモーズ軟膏を定期的に塗布し、QOLを改善することが重要です。

 

余談ですが、犬や猫において、乳腺腫瘍は、若齢時に避妊手術を行うことで発生リスクが抑制されることが報告されています。

✳︎犬の避妊手術のタイミングと乳腺腫瘍発生率の抑制

1回目の発情前の避妊手術 0.05%

2回目の発情前の避妊手術 8%

3回目の発情前の避妊手術 26%

3回目の発情以降の避妊手術 抑制効果なし       Brody RS JAVMA 1983

 

当院では、新しく子犬、子猫を迎え入れた方に、子供を産ませない場合、不妊手術をお勧めしております。

疑問点などあれば、パピーパーティや診察時にお聞き下さい。