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症例紹介

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こんにちは。獣医師の竹田です。

今まで外科のお話が多かったので、たまには内科のお話にしようと思います。

さて今回は、猫の病気で有名な腎不全の中でも、急に手足の筋力が低下し、起立困難を呈した症例について取り上げたいと思います。

 

症例:猫、キジトラ、オス、5歳

主訴:元気・食欲がない、意識ははっきりしているが、全く立てない、野外に出る、尿が溜まっている

野外に出るので排尿は不明でしたが、猫下部尿路疾患(FLUTD)、特発性膀胱炎がまず疑われました。

尿道カテーテルが留置できたので、溜まっていた尿(血尿)を抜き、膀胱洗浄。

同時に血液検査も実施。

 

血液検査:白血球:28300/μL(5000-18300)、BUN:>130mg/dL(16-36)、CREA:12.4mg/dL(0.8-2.4)、PHOS:14.6mg/dL(3.1-7.5)、Ca:5.2mg/dL(7.8-11.3)、Na:148mmol/L(150-165)、K:>10mmol/L(3.5-5.8)、Cl:110mmol/L(112-129)

状態としては、かなり悪い腎臓病でした。 IRISの急性腎不全のグレード分類では、5/5(下記参照)。

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いかに早く尿を作らせるか、腎機能を回復させられるかが治療のキーとなります。

しかし、この子の場合、筋力が低下し、起立不能、足先を触ると過剰に反応しました。

(何か変…。いつもと違う…。意識ははっきりしており、痛覚もあるので、脳や脊髄の異常で麻痺しているのではなさそう…。)

僕なりの推測になりますが、この子が苦しんでいた原因として、低カルシウム血症高カリウム血症を疑いました。

 

低カルシウム血症(特に6.5mg/dL以下で)

症状:指や四肢にチクチクするような筋肉痛、発作、不整脈など

治療:グルコン酸カルシウム溶液の静脈内投与やチアジド系利尿薬投与、ビタミンD補充療法など

高カリウム血症(特に9.5mmol/L以上で)

症状:筋力低下や四肢の麻痺知覚過敏、不整脈など

治療:グルコース+インスリン製剤の投与、重炭酸ナトリウムの投与(体内をアルカリ性に傾ける)、グルコン酸カルシウム溶液の静脈内投与(心筋毒性の保護)、利尿による排泄など

 

腎不全では、腎機能の低下によってリンカリウムは体外へ排出できなくなり、高カリウム血症代謝性アシドーシス高リン血症になります。

今回のような腎臓病に伴う低カルシウム血症の機序としては、

腎臓でのビタミンD産生の低下による腸管でのカルシウムの吸収不良

リンの上昇に拮抗したカルシウムの低下 が考えられます。

 

治療:ソルデム1輸液(カリウムがなく、利尿作用のあるグルコース、アルカリ性に傾く重炭酸イオンを含む)、メイロン2.0mEq/kg/IV、リン吸着剤、ラプロス(ベラプロスト)

 

とにかくカリウムを下げることとカルシウムを上げることに専念。

でもここでやってはいけないのがカルシウム製剤の投与。リンとカルシウムの値を掛け算して70を超えると石灰化を引き起こすからです。この子の場合すでに70を超えてます。

またカルシウムイオンはアルカリ性で石灰化します。リンを動かすしかありません。

 

翌日、立って動いていました。正直びっくりしました。ここまで良くなってくれるとは、頑張った甲斐がありました。

血液検査もBUNとCREA以外、基準値範囲内。

今回、腎臓病でリンとカリウムが異常に高値だと低カルシウムとなって、結果的に知覚過敏と四肢の筋肉麻痺になることがあるのだと分かりました。

今後も注意深い観察が必要ですが、まだ若いのでいち早く元の生活に戻って欲しいと願います。

以上、変な猫の腎不全のお話でした。

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2017.2.20

口のできもの

こんにちは。獣医師の竹田です。

今回は、口にできものができた犬の症例について紹介したいと思います。

 

症例:Mix、7歳、去勢オス

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主訴:下顎先端にできものができ、一ヶ月間で大きくなってきた

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X線検査:局所の明らかな骨融解像は、認められず

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細胞診:細胞集塊は採取されず

 

治療方針を決定するため、麻酔下で一部切除生検を実施

 

病理組織診断:棘細胞エナメル上皮腫(歯肉に発生する歯原性上皮由来の腫瘍で、転移はしないが、局所の骨組織に浸潤するため、場合によっては一部顎骨の切除も必要となる)

 

治療:外科切除(下顎切歯レベルの腫瘍の辺縁切除と底部骨組織の搔爬)

ちなみに放射線感受性が高いため、放射線治療も有効ですが、高価であることと遠出が必要です。

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術前

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術後

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切歯は無くなりましたが、外貌の変化はほとんどなく、また局所麻酔も使っているため、術後は何事もなかったかのように綺麗な顔で退院しました。

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以上、外科治療が有効な腫瘍のお話でした。

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こんにちは。

獣医師の竹田です。

今回は、自壊した体表部の腫瘍の緩和的な治療として、モーズ軟膏を紹介したいと思います。

参考文献:「体表の自壊した腫瘤に対するMohs ペーストの有用性」

 

一般的に、体表部にできた腫瘍の第一選択となる治療は、外科切除です。

しかし、外科切除によるメリット(即座に腫瘍組織を最大限摘出できるなど)、デメリット(麻酔が必要、侵襲性がある、一時的なQOLの低下など)を考えると、中にはデメリットが上回ってしまう症例もいます。

そういう場合に良いとされる緩和的な治療方法が、モーズ軟膏です。

 

モーズ軟膏は、1930年代にアメリカの外科医モーズが考案し、皮膚がんなどを化学的に固定して腫瘍からの出血、感染、悪臭や疼痛などを抑制し、末期患者のQOLの改善を目的として応用されています。

 

モーズ軟膏の作成に必要な材料

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方法

まずモーズ軟膏を作成します。

患部を洗浄し、自壊した部分以外の正常な皮膚にワセリンなどを塗布します。

自壊した部分を覆うようにモーズ軟膏を塗布し、10分程度放置した後、ガーゼで拭き取り、洗浄して処置が終わります。

 

ここで症例をご紹介します。

プロフィール:ミニチュア・ダックス、17歳、避妊メス(避妊手術は11歳時

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主訴:左第2乳腺に、増大傾向を示し、底部固着、自壊した乳腺腫瘍を認め、来院。

仮診断:おそらく高悪性度の乳腺腫瘍

治療方針:モーズ軟膏塗布による緩和的治療

 

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処置前

 

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モーズ軟膏塗布

 

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処置後

 

自壊し、感染、出血があった部分は、モーズ軟膏により固定され、抑えられているのがわかります。

もう少し若く、元気があれば外科切除が第一に選択されますが、老齢で、積極的な腫瘍組織の外科切除によって予後がさほど延長しないと予測される場合には、安価で容易に行えるモーズ軟膏は患者にとっても飼い主にとっても非常に良い選択肢であると思います。

今後は、寿命を全うするまでモーズ軟膏を定期的に塗布し、QOLを改善することが重要です。

 

余談ですが、犬や猫において、乳腺腫瘍は、若齢時に避妊手術を行うことで発生リスクが抑制されることが報告されています。

✳︎犬の避妊手術のタイミングと乳腺腫瘍発生率の抑制

1回目の発情前の避妊手術 0.05%

2回目の発情前の避妊手術 8%

3回目の発情前の避妊手術 26%

3回目の発情以降の避妊手術 抑制効果なし       Brody RS JAVMA 1983

 

当院では、新しく子犬、子猫を迎え入れた方に、子供を産ませない場合、不妊手術をお勧めしております。

疑問点などあれば、パピーパーティや診察時にお聞き下さい。

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こんにちは。獣医師の竹田です。

今回は、白猫に多い皮膚の扁平上皮癌の症例をご紹介します。

 

猫において、扁平上皮癌は皮膚や口腔内に多く発生し、臨床現場でよくみる悪性腫瘍です。

中でも、白猫に多い皮膚の扁平上皮癌は、原因の一つとして紫外線誘発性と考えられています。

一般的に、猫の口腔内の扁平上皮癌の予後は非常に悪いですが、白猫に多い紫外線誘発性の皮膚(特に耳介部、眼瞼、鼻鏡)の扁平上皮癌は、外科切除や放射線治療、その他の治療法により、予後良好が多いです。

もちろん進行度は大変重要であり、発見時、局所周囲のリンパ節や肺などへの転移がないことが条件です。

 

では、ここで症例を紹介します。一部、手術の写真を掲載しています。

プロフィール:猫Mix(毛色:白黒)、16歳、避妊メス、4kg

主訴:右耳介部にできた痂皮(かさぶた)が治らず、広がっていく、自壊した腫瘤を形成

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視診、触診上、自壊した耳介の腫瘤は0.6cm大、耳下腺リンパ節や下顎リンパ節の腫脹なし

細胞診:NC比の増大した軽度から中等度の核異型を示す扁平上皮細胞集塊を認めた

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仮診断:紫外線誘発性の扁平上皮癌(T1N0M0)

治療:外科切除(右耳介の部分切除、1cmマージンを確保)

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術後病理組織診断:扁平上皮癌(マージンクリア、脈管浸潤なし)

 

この子の場合、16歳と高齢ながら特に麻酔の不安要素もなく、早期発見・早期治療を行うことができました。今後は痛みからも解放され、天寿全うできると考えられます。

当院長は、日本獣医がん学会の定める数少ない獣医腫瘍科認定医Ⅰ種を取得しております。

できものが急に大きくなったなど不安な点があれば、いつでもご相談下さい。

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こんにちは。獣医師の竹田です。

今回は、東京の大学で循環器を専門とされている鈴木先生にご協力を頂いて、若齢犬の肺動脈狭窄症のバルーンカテーテル治療を行いましたので紹介したいと思います。

 一部、手術写真を掲載してますので、ご注意下さい。

 

 

肺動脈狭窄症とは?

犬の先天性心疾患の中で2番目に多く、小型犬に多いのが特徴です。

ほとんどの症例は無症状から軽度の症状であるため、心エコー検査で肺動脈血流速度と圧較差を測定し、しっかり重症度を評価する必要があります。

(最大血流速度:3.5m/sおよび圧較差:およそ40-50mmHg以下を軽度、最大血流速度:5m/sおよび圧較差:およそ100mmHg以上を重度)

また、肺動脈狭窄のタイプは弁上部、弁性、弁下部(漏斗部)に分類されます。

治療は、重症度により、体外循環下での拡大路形成術、バルーンカテーテル術、内科治療(β遮断薬など)を行います。

 

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では、症例を紹介します。

プロフィール:ポメラニアン、1歳2ヶ月齢、オス、体重:2.6kg、BCS:2、収縮期性心雑音を聴取

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術前心エコー:右心拡大、心室中隔の扁平化、肺動脈弁の異常と狭窄像、肺動脈弁後部のモザイク血流、肺動脈血流速度:4.55m/s、圧較差:82.9mmHgが認められた

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診断:肺動脈狭窄症の中等度-重度

治療:肺動脈狭窄部位をバルーンカテーテルにより拡張する

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頸静脈を糸で牽引しながら、切開、そこからガイドワイヤー、カテーテル、バルーンをCアーム透視下で、頸静脈→右心房→右心室→肺動脈弁へと進めていき、狭窄部位でバルーンを拡張させます。その後、カテーテルを抜き、頸静脈の切開部位を縫合し、治療が終わります。

難易度は高い手術ですが、侵襲性は低く、無事に終わることができました。

 

術後心エコー:肺動脈血流速度:1.46m/s、圧較差:8.5mmHg(術前の肺動脈血流速度:4.55m/s、圧較差:82.9mmHg)

血流速度や圧較差は正常化し、治療が成功したことを確認できました。

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術後も良好に経過し、無事退院しました。今後は、定期的に心エコー検査を行い、経過を評価する必要はありますが、健康に過ごせることでしょう。

 

当院は、循環器専門医と協力して循環器症例のより専門的な診断、治療ができる体制を整えています。何か気になることがあれば、いつでもご相談下さい。